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「魔術師ってのは分からねえな。一族の面子だの階級だのが余程大事らしい。他人を殺そうとする位にな」
「………」
何も言えなかった。
だって私も魔術師だから。
もし私が転落人生を歩んでいなかったら、彼女の様になった可能性もある。
同期の出世を妬み、殺したい程憎むかもしれない。
一族の為に。
そんな事を考えていると、彼は鼻で笑った。
「阿呆か。てめえがあんなクソ生意気な小娘になるかよ。馬鹿がつくほどのお人好しだろうが。てめえは」
「ルーちゃん……もう、また勝手に」
「だから遮蔽しろっつってんだよ。このうっかり迂闊馬鹿小娘。おら、ぼやぼやしてんな!やるぞ!」
「……了解です!」
冷えかけた心が温かさを取り戻す。
本当に私は弱い。
ルーちゃんがいないと、気合いも出せない。
勇気だって振り絞れない。
しっかりしなきゃ!
パンと一つ頬を打って気合いを入れ直す。
「さあ、始めましょうか、主任魔術師さん?」
「望むところです……っ」
「それでは互いに決闘の制約を」
審判に促され、私たちは互いに口ずさむ。
普通は挑まれた方が先の口上を述べるのだが、今回は成績順ーーつまり、彼女が先の口上を述べる。
「我らは互いに汝が道を阻む者」
「同じ道は歩まず、されど逝き着く先は違わず」
「誇りを持って挑むべし」
「嘘偽りなく受け入れよ」
「死して恨まず、血を糧に歩め」
「生きて奢らず、その血と共に歩め」
「我が術(て)は、汝を破る」
「我が術(て)は、汝を砕く」
「誓いをここに!」
息を吸うと力の限り声を上げた。
「「我ら、星骸の塔の使徒!魔術師よ、誇り高くあれ!」」
同時に魔法陣が輝きを増し、光の柱を吹き上げる。
「はじめ!!」
審判の声が開始を告げた。
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