第48話「ローザンヌの魔術師」

2/5
前へ
/1057ページ
次へ
「『1つ、2つ、3つ……打てよ星屑』」 緑の光が再び彼女の手に集う。 拳大ほどの光の玉がビー玉くらいの大きさに集約され、熱量をあげる。 「許可を出せソラ!」 「!」 忘れてた。 従霊は勝手には動けない。 特にこうした魔術的な特殊フィールドの中では、主の命令がない限り行動が大幅に制限される。 「ルーちゃん!“迎撃”!!」 「了解だ」 私の命令に彼が応えると、私の中の魔力が一気に持っていかれる。 従霊に命令による対価である魔力が支払われた証拠だ。だが、そこで私は軽く瞠目した。 嘘。 ルーちゃん動かすのって、こんなに魔力摂られるの?! 普段彼に供給している魔力の比じゃない。 恐らく3日分は軽く持っていかれた。 という事は……彼は普段、恐ろしく低コストの対価で納得していたと言う事だ。 「腹減った。寄越せ」 そう言って摂られた魔力はごく僅か。 私が消耗しない程度だった。 今回は従霊登録されているので従霊として正当に戦う事になる。だからそのシステムが魔法陣を通して起動しているからか彼自身、供給量を調整できない。 でもだとしたら ルーちゃん、今迄ずっと……? 思考を遮る様に、フェリシエル嬢の術が完成し放たれた。凝縮された高濃度のエネルギーが解き放たれる。高速の閃光が三条。 「“ライザー”!!」 雷撃の速さでこちらに向かう。 目を開けているのも躊躇われるほどの光量。 「舐めんなっ!」 その光にルーちゃんが拳を叩きつけた。 1本目はそれで霧散する。 高出力のエネルギーを、物理で消し飛ばすだなんて、とんでも技だーーしかし、あと2本。 他の2本は別の軌道を描いて私のいる結界すれすれに着弾する。 石畳が抉れ、その周囲が黒く焦げ付いていた。 ……外れた? てっきり直撃ルートだと思ったが、それは地面を穿っただけだった。 見ると彼女は僅かに顔を顰めている。 もしかして……! 「ルーちゃん、“攻撃開始”!コマンドは“お任せします”!!」 「ザックリだなおい!」 文句を言いながらも彼がフェリシエル嬢に向かって駆け出す。 速い! あちらまで20m近くはあるが、それを一瞬で詰めた。 魔術師は得てして接近戦に弱い。 このまま結界に肉薄出来れは、ルーちゃんのパワーで押し切れる。 彼の拳が結界を捉えた。 いける! そう思った矢先 「“テイズ・ウォール”!!」 「なっ……!」 突如として電磁波の波が壁の様に展開した。 あれはーー
/1057ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5593人が本棚に入れています
本棚に追加