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「略式展開……っ!?」
源素魔術に用いられる詠唱をほぼ必要としない術式だ。
ありえない……っ!
惑星魔術が略式になるだなんて……そんな事が。
愕然とする私の目の前で、ルーちゃんがまともに電磁波に腕を突っ込み、その外皮が一瞬で燃え上がる。
「ルーちゃん……!」
悲鳴に近い声で叫ぶと、すぐ様いつもと変わらぬ不機嫌な声が飛んできた。
「喚くな!」
そう言って一跳躍で飛びずさると距離を開けて相手の出方を見る。
「なんだありゃ。惑星魔術ってのは短縮出来ないんじゃなかったか?短縮どころか、省略しやがったぞ」
私のいる付近まで戻った彼が腕を振り、まとわりつく炎を払う。いつもは例え岩にぶつかろうが無傷を保つ彼の腕が、痛々しいほど真っ黒に焼け焦げていた。
「ルーちゃん、腕……!」
「あ?ああ、ちょっと焦げただけだ。それよりアレだ。どうなってる?」
自身の怪我などまるで気にも留めず、私に尋ねる。
「わかりません……ただ、普通の惑星魔術じゃありません!」
「だろうな。で。仕組みは分かるか?」
その言葉に私は唇を噛む。
分からない。
今の所は。
……でも……!
「……時間を、下さい」
「解けるか?」
恐らく。と口にしようとして、私は呑み込んだ。
違う。今言うのはこれじゃない。
戦っているのはルーちゃんで、傷付いているのも彼だ。
私は見ているだけ。
一緒にあの魔術に飛び込む事すら出来ない。
なら、私はやるべき事をしなきゃ。
私が……今、私がやるべき事。
言うべき言葉はーー
「……解きますっ!!」
真っ直ぐに目を見て力一杯宣言すると、彼はニイッと口の端を笑みの形に吊り上げた。
「上等だ。なら少し粘ってやる」
「はい!」
「回復はいい。無駄な魔力使うんじゃねえぞ?余計な気は回さずに、てめえはてめえの仕事しろ」
再び飛び出そうとする彼に、私は心の中で呼び掛けた。
ーールーちゃん!
『どうした』
念話が返る。
恐らく彼女の魔術は精度が低いです
確かに一撃の威力は大したものではありますが狙いをつけるのは、多分、苦手です
説明をすると彼は「なるほどな」と、声に出して面白そうに笑った。
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