第48話「ローザンヌの魔術師」

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「略式展開……っ!?」 源素魔術に用いられる詠唱をほぼ必要としない術式だ。 ありえない……っ! 惑星魔術が略式になるだなんて……そんな事が。 愕然とする私の目の前で、ルーちゃんがまともに電磁波に腕を突っ込み、その外皮が一瞬で燃え上がる。 「ルーちゃん……!」 悲鳴に近い声で叫ぶと、すぐ様いつもと変わらぬ不機嫌な声が飛んできた。 「喚くな!」 そう言って一跳躍で飛びずさると距離を開けて相手の出方を見る。 「なんだありゃ。惑星魔術ってのは短縮出来ないんじゃなかったか?短縮どころか、省略しやがったぞ」 私のいる付近まで戻った彼が腕を振り、まとわりつく炎を払う。いつもは例え岩にぶつかろうが無傷を保つ彼の腕が、痛々しいほど真っ黒に焼け焦げていた。 「ルーちゃん、腕……!」 「あ?ああ、ちょっと焦げただけだ。それよりアレだ。どうなってる?」 自身の怪我などまるで気にも留めず、私に尋ねる。 「わかりません……ただ、普通の惑星魔術じゃありません!」 「だろうな。で。仕組みは分かるか?」 その言葉に私は唇を噛む。 分からない。 今の所は。 ……でも……! 「……時間を、下さい」 「解けるか?」 恐らく。と口にしようとして、私は呑み込んだ。 違う。今言うのはこれじゃない。 戦っているのはルーちゃんで、傷付いているのも彼だ。 私は見ているだけ。 一緒にあの魔術に飛び込む事すら出来ない。 なら、私はやるべき事をしなきゃ。 私が……今、私がやるべき事。 言うべき言葉はーー 「……解きますっ!!」 真っ直ぐに目を見て力一杯宣言すると、彼はニイッと口の端を笑みの形に吊り上げた。 「上等だ。なら少し粘ってやる」 「はい!」 「回復はいい。無駄な魔力使うんじゃねえぞ?余計な気は回さずに、てめえはてめえの仕事しろ」 再び飛び出そうとする彼に、私は心の中で呼び掛けた。 ーールーちゃん! 『どうした』 念話が返る。 恐らく彼女の魔術は精度が低いです 確かに一撃の威力は大したものではありますが狙いをつけるのは、多分、苦手です 説明をすると彼は「なるほどな」と、声に出して面白そうに笑った。
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