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「隕鉄か!」
「うふふ、竜に鉄は効かない。でも“外”の概念を纏う隕鉄なら効果はある。一応、これでも学んできましたのよ?」
「ほう。だから?」
ルーちゃんが尋ねると、彼女は不愉快そうに嘲笑した。
「減らず口を叩くのはおやめなさいな。私、羽虫を潰すのにも全力を注ぐ質ですの。ほら、落ちこぼれさん、早く降参しないと貴方の大事な従霊が黒焦げのローストトカゲになりますわよ?」
挑戦的な言葉に一瞬思考するのが止まりかける。
が、そこで私ははたと気付いた。
スターゲイザーの呪文詠唱の前、彼女は絶対防壁とも言えるテイズ・ウォールを解除した。
質量とルーちゃんの身体に与えたダメージを換算すると、一見見た目が派手に見えるこめかみの傷を付けたスターゲイザーの方が威力が高く見える。
しかし、その傷は早くも出血が止まっており、完治も間も無くといった感じに見えた。だが、テイズ・ウォールに突っ込んだ彼の右腕は未だ焦げたままーーと言うことは、恐らく、あの壁の魔術の方が威力が高いのだ。
惑星魔術は威力と詠唱の長さが比例する。
省略出来ない詠唱を省略し、本来の威力と変わらぬ効果を発揮する。
しかしその力は瞬間的で、恐らく持続“出来ない”。
予測はついた。
でも確信が持てない。
もし違ってたら?
怖い。
知らず呼吸が浅くなり、息苦しさを覚える。
何か、何か見落としている。
もしこの仮説が正しいなら、あれがあるはず。
「ルーちゃん」
「なんだ」
呼ぶと直ぐに応える。
私は無茶を承知で願った。
「もう1度……もう1度だけ、お願いします」
「……当たりがついたか」
「ええ、少し。でも確信がないんです。違ったら……手に負えない。でももし仮説通りならーー」
「分かった」
説明するよりも早く、彼は即答した。
「もう1度だけ突貫してやる。その代わり、次は反撃するぞ。そろそろアレに突っ込むのも飽きた」
「すみません」
「謝んな、うぜえ。噛むぞ」
「やです」
「ふん!」
楽しげに彼は鼻を鳴らした。
あと1回。
これで確証を掴んで見せる。
「ルーちゃん、“お任せ”&“ゴー”!!」
「っ!だから、てめえは少しオーダーの仕方に気を遣え!」
突っ込みを返しながらも、彼は再び太陽の陣へと突撃を開始した。
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