第48話「ローザンヌの魔術師」

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「隕鉄か!」 「うふふ、竜に鉄は効かない。でも“外”の概念を纏う隕鉄なら効果はある。一応、これでも学んできましたのよ?」 「ほう。だから?」 ルーちゃんが尋ねると、彼女は不愉快そうに嘲笑した。 「減らず口を叩くのはおやめなさいな。私、羽虫を潰すのにも全力を注ぐ質ですの。ほら、落ちこぼれさん、早く降参しないと貴方の大事な従霊が黒焦げのローストトカゲになりますわよ?」 挑戦的な言葉に一瞬思考するのが止まりかける。 が、そこで私ははたと気付いた。 スターゲイザーの呪文詠唱の前、彼女は絶対防壁とも言えるテイズ・ウォールを解除した。 質量とルーちゃんの身体に与えたダメージを換算すると、一見見た目が派手に見えるこめかみの傷を付けたスターゲイザーの方が威力が高く見える。 しかし、その傷は早くも出血が止まっており、完治も間も無くといった感じに見えた。だが、テイズ・ウォールに突っ込んだ彼の右腕は未だ焦げたままーーと言うことは、恐らく、あの壁の魔術の方が威力が高いのだ。 惑星魔術は威力と詠唱の長さが比例する。 省略出来ない詠唱を省略し、本来の威力と変わらぬ効果を発揮する。 しかしその力は瞬間的で、恐らく持続“出来ない”。 予測はついた。 でも確信が持てない。 もし違ってたら? 怖い。 知らず呼吸が浅くなり、息苦しさを覚える。 何か、何か見落としている。 もしこの仮説が正しいなら、あれがあるはず。 「ルーちゃん」 「なんだ」 呼ぶと直ぐに応える。 私は無茶を承知で願った。 「もう1度……もう1度だけ、お願いします」 「……当たりがついたか」 「ええ、少し。でも確信がないんです。違ったら……手に負えない。でももし仮説通りならーー」 「分かった」 説明するよりも早く、彼は即答した。 「もう1度だけ突貫してやる。その代わり、次は反撃するぞ。そろそろアレに突っ込むのも飽きた」 「すみません」 「謝んな、うぜえ。噛むぞ」 「やです」 「ふん!」 楽しげに彼は鼻を鳴らした。 あと1回。 これで確証を掴んで見せる。 「ルーちゃん、“お任せ”&“ゴー”!!」 「っ!だから、てめえは少しオーダーの仕方に気を遣え!」 突っ込みを返しながらも、彼は再び太陽の陣へと突撃を開始した。
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