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第49話「からくり」
「何度も何度も……!いい加減、諦めて這いつくばりなさいっ!!“テイズ・ウォール”!!」
苛立たしげにフェリシエル嬢が目を吊り上げ、電磁波による魔術防壁を展開した。
発動した……!
私は注意深く相手を観察する。
詠唱はされていない。
けれど術式は構築された。
どこで?
「………あれは!」
その時、私ははっきりと見た。
彼女のルビーのブローチが一瞬だがチカリと光り、その光が去ると同時に透き通っていたはずの色が僅かに濁ったのを。
見つけた!
そして発動からの時間を図る。
1、2、3、4、5、6、7、……8秒。
間違いない!!
予想は確信に、そして紛れもない事実に変わる。
すかさず私は叫んだ。
「ルーちゃん!近くの石畳を引っぺがして“全力投擲”!後、合図で再度“突貫”!反撃です!!」
「!……はっ!了解!!」
オーダーが通ると再び魔力がガッツリ持って行かれる。
身体の芯から熱が抜かれるような感覚。
これが益々強くなると意識が保てなくなり落ちる。
まだです。
やっと……やっと見付けた勝機なんです!
逃す訳にはいかない!!
歯を食いしばって耐える。
「何をしようが無駄ですわ!“テイズ・ウォール”!」
来た。再展開。ルーちゃんはオーダー通り、近くの石畳を古い壁紙を剥がす様な気軽さで引き剥がし、思い切り壁に向かって投げ付ける。
彼女の魔術は射撃系ばかりだが精度が低い。
それはつまり、彼女が自身の視覚に頼っているからだ。
正確に狙いが付けられるのは1点だけ。それも見えてる範囲に限られる。
他のは凡そ狙いをつけた視界の辺りに向かうだけ。
それなら、石畳で彼女の視界を塞げば魔術は放てない。そしてーーあの壁も、ずっと発動させ続けられる訳じゃない。
発動時、ルビーのブローチが輝いたのはあれが触媒だからだ。
付与魔術(エンチャント)による本来の術式の保存。
恐らくこの戦いの前に彼女は準備したのだろう。
物理攻撃対策として。
あの防御魔術のアーティファクトを。
ローザンヌは古い魔術師の家系だから、懇意にしている魔術師も多い。
その中で付き合いの長い付与魔術師(エンチャンター)に依頼したのだろう。
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