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「馬鹿にするのも大概になさい、この落ちこぼれ!!追加展開。継続。“テイズ・ウォール”!!」
「え!?」
ルビーに残った最後の1回をここで使い切る。
まさか、ここで時間稼ぎなんてする意味なんてないはず。
だがーーエメラルドの強い光を宿した瞳がつり上がったかと思うと、静かに伏せられ詠唱体勢に入られた。
「“本物”を見せて差し上げます。『悠久より来たれ、翠伯の眼差し。外星(とつほし)より放て、紫電の楔。広がり。乱れ。綾織り集え。触れ寄る愚者に炎熱の裁きを』……」
まさか、付与魔術で持ち込んだものではなくて、本物の魔術を展開する気なの?!
「しまった!」
「“テイズ・ウォール”」
もし彼女の魔術の持続時間がアーティファクトより長いのだとしたら、こちらが圧倒的に不利になる。
考えれば分かる事だったのに……私の馬鹿!
2回分を消費しても効果時間がより長いのならば、唱える価値はある。
力ある言葉により完成した電磁波の壁はーーアーティファクトに頼っていた時よりも更に巨大で、激しくスパークしている。
結界越しにも伝わるほどその熱量は凄まじく、威力は単純に見ても凡そ倍。
アーティファクトの比では無かった。
「これが、私本来の“テイズ・ウォール”ですわ。さて、ではそろそろ……お遊びはおしまいです!」
そう告げると彼女は再び詠唱体勢に入る。
決めにくるつもりだ。
でも、どうすれば……!?
あの壁を超える事なんて出来ない。
ルーちゃんだってあんなのに突っ込んだら、火傷じゃ済まない。下手をしたら核(コア)が破損して死んでしまう事だって有り得る。
「チッ……させるかよ!」
ルーちゃんが我が身が焦げ付くのも構わずに突っ込んだ。
「ルーちゃん!ダメ!!」
咄嗟に叫ぶと彼は怒鳴り返した。
「ソラ“許可”だ!」
「え!?」
「寄越せ!!」
何を要求されているのかは分からないが、彼は恐らく何かしようとしている。この状況を打開する“何か”を行うのに……私の許可を求めている。
「“許可”します!」
「了解……耳塞いどけ!グラつくぞ!!」
彼が叫んだ。
良く分からなかったが彼の言葉に従い、私は自分の耳を塞ぐ。すると彼は大きく息を吸い込むとその鋭い牙がズラリと並ぶ口を開いた。
そしてーー大気が、崩れるのではないかという程の巨大な咆哮をあげた。
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