第49話「からくり」

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「く、来るな!下がりなさいっ!!『飛来せよ星屑』……!“シュート”!!」 エメラルドの光が真っ直ぐに飛ぶが、彼はそれを首を傾げて避けて見せた。 初めの頃の精細さに欠けるそれでは、彼を捉える事は不可能だ。 「無駄だ」 死刑宣告の様な無慈悲な声音が響く。 こちらからは彼の表情は窺い知ることは出来ないが、フェリシエル嬢の顔面が蒼白なのを見ると、相当怖い顔をしてるに違いない。 「この俺をここまで手こずらせたんだ。人間にしちゃ上出来だ。褒めてやる。……そうだな、ただ潰すにゃ少々惜しい。情けを掛けてやる。そこから出ろ。そして、あいつに詫びろ」 あいつ、と彼は親指でクイッと私の方を示した。 「だ、誰が……!!!」 必死に抵抗する彼女だが、ルーちゃんの声は冷たい。 「そうか」 あっさり呟くと、その瞬間ーー ドゴォンッ 「きゃあっ!?」 思い切り振りかぶられた拳が叩きつけられた。 フェリシエル嬢が悲鳴をあげる。 一撃が結界にダメージを与え、その耐久値を削り取る。 「なら仕方ねえ。泣き入れるまで、ぶん殴るだけだ。途中で結界もぶち壊れるだろうが知った事か。命乞いするなら、早めにするんだな」 そう言ってもう一撃。 ドォオンッと結界を震わせる重い打撃音がした。 「きゃぁあっ!?」 彼女が悲鳴をあげる。 結界が明滅した。 「ま、待て!」 それまで見ていた審判が静止した。 「結界残量が今ので50%を切った!中断だ!」 「……あ?知るかよ」 「!やめろっ!!」 更に一撃。 壁を抉る様な音がした。 いけない……! もしかしてルーちゃん、ものすっごく怒ってる!? 「ルーちゃん……!」 慌てて静止しようとするが、それでも彼は攻撃を止めない。まるで狂戦士(バーサーカー)の様に追撃し、徹底的に結界を破壊し、相手を中から引きずり出そうとしている。 「ルーちゃん!いけません!やめて……やめなさいっ!!」 大きな声で彼の耳に届く様に叫ぶと、今迄こちらを見ていなかった赤い双眸が振り返った。 血の様にーー赤い。 いつものキラキラした眼差しではなく、何処かほの暗い、どろりとした色の瞳が私を写した。 その瞳に見据えられた瞬間、背筋が凍った。 ……これ、ほんとに、ルーちゃん……? 「あんだよ、ソラ。止めんな」 不機嫌そうな低音で命令を拒否された。
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