第49話「からくり」

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今迄ルーちゃんを怖いと思う事はあっても、潜在的に恐怖する事はなかった。 でも今は……今の彼は すごく、怖い…… 敵意は私に向いていないはずなのに、私まで壊そうとしているかの様に感じる。 こんな彼をーー私は知らない。 「ルー、ちゃん……」 喉が張り付いたように上手く声が出ない。 「なんだ」 一応私の声だけは聞く気はあるのか、鬱陶しげに返事をされる。 「も、もう、勝負はつきました……こ、これ以上の追撃は……」 必要ないと言おうとしたが、それよりも先に彼が口を開く。 「まだだ。まだ、小娘は生きてる」 「ルーちゃん……!」 「……言ったろ。泣き入れるまで、許しやしねえよ。死にたくなきゃ、一言詫び入れりゃいい。そうすりゃ俺も……ムカきはするが……一先ず溜飲は下げてやる」 そう言って再びフェリシエル嬢を見遣る。 「だ、誰が……!」 名門の矜持か。彼女はそれを拒否した。 それを見て彼が満足そうに嗤う。 「だ、そうだ。……続行だな」 血の色の瞳が、それはそれは楽しげに細められた。 ゆらりと彼が彼女に向い歩を進める。 結界を破壊して、引きずり出そうと。 でも何故か、私にはそれだけで済むとは思えなかった。 「駄目……駄目です!ルーちゃん!駄目!!」 駄目だと訴えても彼は聞かない。 従霊は本来、主の命令には絶対服従のはずなのに、私の印章には彼を制御する力がない。 拘束できない。 「ルーちゃん!!!」 懸命に声の限り叫んだが、私の言葉は無視されーー彼の驚異的な破壊力を有した拳が、再びフェリシエル嬢のいる太陽の陣の結界に振り下ろされた。
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