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使えない?
じゃあ、どうして……
困惑する私に彼女は得意げに
「ですが、私はそれを、私が使える形にアレンジしたのです。無知な貴女はご存知ないでしょうけれど、聖フエルザンヌは我がローザンヌが頂く惑星霊の一つに神格化されています。そこで私は聖フエルザンヌの紋章を刻んだのです。同じ惑星霊の力を持つ魔術によって。……足元をよくご覧なさい」
促されて視線を動かすと、リングの至る所に穴が空き、それらが光の筋で繋がって紋章を形成していた。
「これは……!」
驚きに目を見開く。
「うふふ、どう?素晴らしいでしょう?」
「そんな……!」
ではもしかして、彼女はわざと狙いを外していたというのか。
この紋章をリングに刻み、彼の動きを完全に封じる為に。
「私はローザンヌの次期当主。目視しなければ魔術を誘導も出来ない三流ではありませんわ。全てはこの為の布石に過ぎない」
「……!」
「尤も、発動までに時間が掛かりすぎるのが玉に瑕ですけれど。……貴女が従霊を止めてくれたお陰でギリギリ発動まで漕ぎ着けました。……浅はかでしたわね?落ちこぼれのべネトロッサ」
悠然と居住まいを正した彼女が高笑う。
「さあ!形勢逆転!!今度はそちらが赦しを乞う番ですわ!」
「……ルーちゃん!」
どうしよう!
彼の方を見ると彼はまだだ、と言うように視線を向けてきた。
力を吸われながらも、何とかあの拘束から抜け出そうとしている。その様を見て、フェリシエル嬢が小馬鹿にしたように大袈裟な溜息をついた。
「やれやれ、諦めの悪い事。結構、それなら……こうしましょう!」
パチン、と彼女が指を鳴らすと光の蔦が彼の首を締め上げた。
「……ぐっ」
「ルーちゃん!!!?」
ミシミシと骨を軋ませる音がする。
苦しげに彼が鳴いた。
「やめて!やめて下さい!!フェリシエルさん!!」
見ていられずに叫ぶと彼女は
「あら、召喚師の癖に随分とこの従霊が大事なのね?従霊なんて、召喚師の道具に過ぎないでしょうに」
くすくすと笑いなが首を傾げる。
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