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「まあ尤も、そんな道具ですらまともに制御出来ないのでは、貴女に使われるその竜も、大概に哀れですけれど」
「違う……!ルーちゃんは、彼は、道具なんかじゃ……!」
「はっ、甘い事!そんな事だから使い魔にも舐められるんですわ!いいこと?従霊は道具。魔術と同じ。魔術師が使役してこそその真価が発揮される。それなのに貴女ときたら、その雑霊におんぶに抱っこで、自分では何も出来ないじゃない!落ちこぼれ……べネトロッサの面汚し!貴女なんかがいるせいで、ネイト様がどれだけ惨めな思いをされているか、分からないの!?」
蔑む眼差しが向けられる。
強い悪意。
でもそれよりも気になったのは彼女の言葉。
「ネイトが……?」
「そうよ!貴女の所為で、ネイト様は執行課で苦労をされているの!貴女と血縁というだけで、「姉はあの落ちこぼれだろう」と……!ネイト様だけじゃない、ランドルフ卿やエルフェンティス卿、フィーネルチア様!名門らしく華やかな経歴で塔に貢献していらっしゃる皆様が、二言目には貴女の事で蔑まれる!!」
「……っ」
「貴女がいるから!貴女の所為で!!皆が迷惑しているの!!!我がローザンヌよりも優れた一族が、塔の最高術家が貶められるなど、私には、我慢ならないっ!!」
感情も顕に私を断罪する彼女の言葉は……どれも、正しかった。
私の所為で、皆が迷惑している。
私の所為で、一族が貶められている。
私の所為で……
私の、所為で……!
分かってはいた。
しかし、他人から直接的に突き付けられた事実は、私の心を掻き乱すのには充分過ぎた。
「ソラ……っ」
ルーちゃんが私を呼んだ。
呆然としながらも、呼ばれた事実に反応してそちらを見ると、苦しげに呻きながら彼が告げた。
「耳を、貸すな……!ただの、逆恨みだ……っ」
「……ルーちゃん……」
逆恨み?
そうだろうか。彼女の言葉は正しい事の様に思われる。
私さえいなければ……皆、幸せなんじゃないか。
そんな風にさえ思えた。
「図に乗るなよ、小娘……っ!」
ルーちゃんが牙を剥いて敵意を示す。しかし
「はん!地べたを這いつくばった雑霊如きが、私に意見するだなんて、千年早くてよ!」
「……っ!!!」
彼女が腕を振ると更に拘束が強まったのか、ルーちゃんが歯を食いしばった。
苦痛に苛まれながらも彼は声一つあげない。しかし、その表情は身を引き裂く程の痛みがある事を私に示していた。
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