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「ルーちゃん!!」
駄目!!
今はショックを受けてる場合じゃない。
魔法陣から出なきゃ……本当にルーちゃんが殺されてしまう。
勝たなくていい。
落ちこぼれでいい。
蔑まれたままでいい。
でも彼だけは、失う訳にはいかない。
「待って下さい!今ーー」
降参しますから、そう言って魔法陣から出ようとした瞬間。
ドンッ
ルーちゃんが尻尾で石畳の一枚を粉砕した。
驚いてそちらを見ると、彼がこちらを強い眼差しで睨んでいた。
ーーそこを出たら、許さねえ
そう言うように赤い瞳がギラつく。
でもこのままじゃルーちゃんが……!
訴えても彼は首を横に振った。
本当は動くのも辛いはずなのに、はっきりと意志を示した。
「……決心がつかないようね。なら、直接引導を渡して差し上げましょう」
結界残量を減らせば降参もしやすいでしょう。と彼女は零し、そして
「『1つ、2つ、3つ。打てよ星屑』“ライザー”」
三つの閃光を生み出すと、それを真っ直ぐに私に向けて放った。
直撃ルート。
目を逸らす事も出来ずに立ち尽くす。
ああ、終わった……!
そう思った矢先ーー
バシュンッ
何かが砕ける音と共に、眼前に迫っていた光が霧散した。
「……え?」
「な!!」
異口同音。
何が起こったのか分からない私に、彼が笑った。
「……はっ……その程度、役に、立つかよ……っ」
「ルーちゃん!?」
「届かせねえ……っ、絶対な……っ」
閃光を弾いた辺りに赤い文字が浮かんでいた。
ルーンの様だが……私には読めない。
だが、この形は見た事がある。
彼が先程、私の前に刻んだものだ。
「付与魔術を扱い、特有のルーンまで操るだなんて……ただの雑霊ではありませんわね」
フェリシエル嬢が顔を歪ませる。
「不愉快です。非常に。……ですが、主を護ろうとしたその忠義には敬意を払います。ならばこちらも相応の力を見せるべきですわね」
彼女はそう言うと両手を天に掲げるようにして、詠唱体勢をとった。
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