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第51話「第3聖霊:金剣の恒星」
「『無窮。天空に坐(いま)し白星(はくせい)、フエルザンヌの霊に申し上げる。我は真なる忠節と、高き正義を抱く遊星の使徒。汝、その深き慈悲にて、悪しきを裁く我へと加護を与えよ。邪を祓い、禍つ理を打ち砕く金の剣を貸し与え給え』……」
詠唱は続く。
長い……祈りにも似た荘厳な空気が辺りに立ち込める。
これは……!
「『来(きた)れ。来れ。来れ。我は汝の名を呼ぶ。汝を慕う者。されば我が血、我が名、古き星蹟の使徒の名の元、かの敵を誅戮せよ』」
魔法陣に灯が点る。
黄金と銀、眩いばかりの強大な魔力。
空気が鳴動し、真上の空が二色の光帯に割れる。
「『彼の者を、過去(きおく)の彼方へと消し去り給え』……“金剣の恒星(イルソルム・アムネジア)”!!!」
術式の完成と共に空から巨大な光球が出現する。
黄金と銀の、巨大な球形のそれは激しい熱量と高い密度を保つ魔力の塊だった。
大きさは優に10mーーリングの半分を焼き尽くす程の大きさだ。
それが私たちを目掛けて降りてくる。
まるで、罪人に裁きを下す審判者の様に。
「あ、あ……」
その光が迫るのを、私は見る事しか出来ない。
防ぐ手立てなどない。
私には何の力もないから。
その場に崩れ落ちた。
あんなものが直撃したら、結界など容易く消し飛ぶだろう。そしてーー恐らく私も、焼け溶ける。
呆然としてそれを眺める。
ーー死ぬかも。
そう思った。
誰かが止めてくれるかも、そう頭に過ぎったが静止の声も掛からない。
無理もない。
ローザンヌの秘技が間近で拝めるのだ。
魔術師なら興味がないはずがない。
例え1人の命と引き換えにしても、まだ見ぬ秘術に惹かれるーーそれが、魔術師という生き物なのだから。
「消えなさい」
冷酷な宣言と共に手が振り下ろされると、ゆっくり降りて来ていたそれが速度を増し、私目掛けて飛んできた。
駄目ーー!!
目を閉じた。
あれに焼かれて私は死ぬ。
そう思った。しかし
ジュウゥウウッ
肉を焦がす音。
血の蒸発する様な濃密な死の匂い。
だが、痛みも苦しみもない。
熱さえも感じない。
感覚が麻痺したのだろうか。
せめて意識のあるうちに、最後に彼の姿だけでも目に焼き付けようと勇気を振り絞って目を開ける。
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