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ギュッとしがみつくと彼は綺麗な赤い瞳を細めて笑った。
満足そうに。
目を閉じて彼に身を委ねる。
やがて一際眩しく周囲が輝いたかと思うとーー光は立ち消え、辺りに静寂が満ちた。
………耐え、た?
もしくは二人揃って焼け落ちたかとも思ったが、目を開けると辺りには巨大なクレーターと、真っ黒に焦げたリングの残骸が転がっていた。
「……か、はっ」
「!!ルーちゃん!!!」
直ぐ近くで苦悶の声をあげた彼に、私の意識は移った。
ずるりと、大きな身体が私の上からずれ落ちた。どしゃりと湿りを帯びた音をたて、彼が倒れ込む。
「ルーちゃん!ルーちゃん!!」
慌てて抱き起こそうと彼に触れ、私は蒼白になった。
助け起こそうとして触れた手が、真っ赤に染まっていた。
「ルー、ちゃん……っ」
血だ。
これは。
彼の血。
今迄見た事なんてなかった。
でも今はこんなに、全部、赤い。
ショックを受けて呼吸が乱れる。
ヒュッと喉がなった。
いやだ。
いやだいやだいやだ。
こんなの、いやだ。
それだけを脳裏に繰り返していると、痛みに顔を顰めていた彼が目を開けた。
「だから……喚くな……っ」
「で、でも!!!」
泣きながらパニックを起こす私に片手を伸ばすと、彼はグイッと指先で涙を拭う。
「大したこと、ねえ……っ」
「そ、そんなの嘘です!だって、だってこんなに……っ!!」
血が出てるのに!
そう訴える間も彼はグッと身体に力を入れ、起き上がろうとする。
「駄目!!」
酷い怪我をしてるのに、そんな風に動いたら!
慌てて止めようとすると彼は私の腕を掴み、その行為を静止した。
「うるせえ。余計な事、すんな……」
「でも!!」
「大丈夫だ。……もう、治る」
「……………え?」
事もなげに彼は言い放つと、そのまま身を起こした。
先程の苦悶の表情が嘘のように、あっさりと。
「ルーちゃん……?」
「あ?」
立ち上がった彼の背は焼け爛れ、肉と骨と霊核の一部が露出していたが、それらは直ぐにグズグズと肉が盛り上がる事で見えなくなる。
欠損部分が埋まっていく。
皮膚の表面は未だ燻ってはいたが、余りにも驚異的な速度で、彼は致命傷から脱していた。
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