第51話「第3聖霊:金剣の恒星」

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ギュッとしがみつくと彼は綺麗な赤い瞳を細めて笑った。 満足そうに。 目を閉じて彼に身を委ねる。 やがて一際眩しく周囲が輝いたかと思うとーー光は立ち消え、辺りに静寂が満ちた。 ………耐え、た? もしくは二人揃って焼け落ちたかとも思ったが、目を開けると辺りには巨大なクレーターと、真っ黒に焦げたリングの残骸が転がっていた。 「……か、はっ」 「!!ルーちゃん!!!」 直ぐ近くで苦悶の声をあげた彼に、私の意識は移った。 ずるりと、大きな身体が私の上からずれ落ちた。どしゃりと湿りを帯びた音をたて、彼が倒れ込む。 「ルーちゃん!ルーちゃん!!」 慌てて抱き起こそうと彼に触れ、私は蒼白になった。 助け起こそうとして触れた手が、真っ赤に染まっていた。 「ルー、ちゃん……っ」 血だ。 これは。 彼の血。 今迄見た事なんてなかった。 でも今はこんなに、全部、赤い。 ショックを受けて呼吸が乱れる。 ヒュッと喉がなった。 いやだ。 いやだいやだいやだ。 こんなの、いやだ。 それだけを脳裏に繰り返していると、痛みに顔を顰めていた彼が目を開けた。 「だから……喚くな……っ」 「で、でも!!!」 泣きながらパニックを起こす私に片手を伸ばすと、彼はグイッと指先で涙を拭う。 「大したこと、ねえ……っ」 「そ、そんなの嘘です!だって、だってこんなに……っ!!」 血が出てるのに! そう訴える間も彼はグッと身体に力を入れ、起き上がろうとする。 「駄目!!」 酷い怪我をしてるのに、そんな風に動いたら! 慌てて止めようとすると彼は私の腕を掴み、その行為を静止した。 「うるせえ。余計な事、すんな……」 「でも!!」 「大丈夫だ。……もう、治る」 「……………え?」 事もなげに彼は言い放つと、そのまま身を起こした。 先程の苦悶の表情が嘘のように、あっさりと。 「ルーちゃん……?」 「あ?」 立ち上がった彼の背は焼け爛れ、肉と骨と霊核の一部が露出していたが、それらは直ぐにグズグズと肉が盛り上がる事で見えなくなる。 欠損部分が埋まっていく。 皮膚の表面は未だ燻ってはいたが、余りにも驚異的な速度で、彼は致命傷から脱していた。
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