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「言っとくが……俺が溜め込んだ魔力は底を尽きたが、こいつの魔力はまだ残ってる。って事は、まだ俺を動かせるって事だ。言ってる意味、分かるか?」
「それは……!け、けれど……そ、そう、そうよ!そちらの結界は今ので完全に破壊されたはず!!ならば、勝者は私で!!」
「あ?あー……まあ、結界が完全に“壊れていれば”な」
「何を言って……!」
「言うより見た方が早えだろ。おい審判、確認しろ」
フェリシエル嬢の魔術発動と共にリング外に退避した審判の魔術師にルーちゃんが指示を出す。すると
「結界残量47%……こ、これは……?」
「チッ、こちとら反吐が出る程の嫌いなルーンまで使ったってのに……流石に無傷とまではいかなかったか。大したもんだ」
悔しげなルーちゃん。
周囲は困惑している。
それはそうだ。
私だって意味が分からない。
あれだけの魔術を食らったのに、何故?
目を白黒させていると彼は困惑し続ける私たちに説明をした。
「防御ルーンを使った。こいつ(ソラ自身)に掛けても良かったんだが、それだと結界が壊される。そうしたら負け確だろ。それじゃ意味がねえ」
「ま、まさか……!」
「勝ちにいくには、結界も守る必要がある。ただ、従霊は保有陣地にゃ味方として認識されるからな、触れられねえ。となると身を盾にして広範囲型の術式から守るのは至難の技だ。だが、こいつ1人なら……俺の身ぃ一つありゃ充分だ。ま、そういうこったな」
あっけらかんと言い切った。
「ルーちゃん……」
名前を呟くと彼は「驚いたか」と言うように得意気に鼻を鳴らした。
「結界残量的には月の陣47%、太陽の陣23%……」
審判の言葉にフェリシエル嬢が目を見開いて硬直する。
「フェリシエル・ド・ローザンヌ。どうしますか、審判としてはこのまま棄権する事を勧めーー」
「まだよ!!!」
棄権を促す審判員に、彼女は叫んだ。
「まだ……まだ終われない。終わらせる訳には、いかないの……っ!」
「しかし」
「続行申請!まだ私は、やりきっていません!!こんな……こんな形で、終われるものですかっ!!」
彼女の魔法陣はほぼ、その光を失っている。
それは先程の魔術の発現に伴い大半の魔力が消費された事を示していた。
しかし、彼女の意志は変わらない様に見えた。
「どけ審判。続行だ」
「ま、待て!」
「向こうがやるっつってんだ。なら、徹底的にボコボコにする以外ねえだろうが」
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