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い、いくら神様でも何も知らない女性の所にいきなり来て、その……そう言う事するのはどうかと思う。しかし慌てる私に対してホナミさんはと言うと
「うん?別になんも問題ないだろ。だって相手は神様なんだ。名誉でこそあれ、怒る事じゃないよ」
と言った。
な、何というか……東方の人って、皆そうなんだろうか。性におおらかというか、そう言う感じ。
「とまあ普通の神子ならそう思うんだろうけど、そこは何せあたいだからねぇ。夜のは痛かったし、朝は朝で身体に巻き付かれてて重いし苦しいし。やっとこさ起きたらと思ったら何喋る訳でもないし」
「そ、それはまた……で、ど、どうしたんですか?」
尋ねると彼女は至極当たり前の様に告げた。
「そりゃ当然、ぶん殴ったさ☆」
「神様殴っちゃダメですぅぅぅうっ!!!」
キラッと白い歯を光らせ親指を立ててみせた彼女に私は思わず絶叫した。
何だろう。可笑しいな、真面目な話しようとしてた筈なのにな。
まあ、気持ちは分かりますが。
というか寧ろ当然だと思います。
うら若き乙女に対して無体を働いたのだから、如何に神様といえど一発くらいは貰うべきかと。
神話では神様が女性を見初めてそのまま強引に妻にする場面は良く見掛けるが、実際にやられた人がいるとは思わなかった。
しかも、ぶん殴ったとは……
ホナミさん、ぶっ飛びすぎ……
そういう話では大体女性は素直に受け入れるもので、その後は仲睦まじい(偶に愛憎渦巻くにせよ)夫婦となる場合が多いだけに、ホナミさんの言葉は衝撃だった。
しかも彼女の場合、神様を祀る祭祀という立場にある。ならば尚の事、喜んで身を捧げるのが普通な気もするのだが、彼女はそうではなかったらしい。
その時の様子を、ホナミさんは笑いながら話してくれた。
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夜に突然やって来て人様を、こちらの返答も聞かずに無理矢理嫁にした御方は朝、スヤスヤと実に気持ち良さそうに眠っていた。
「………」
早朝の光に照らされて、その御方の姿が露わになる。
それはーー巨大な蛇だった。
大きさは優に三間半(6mくらい)。
昨夜は人型だと思ったのだが今はその型を元の形(ナリ)に戻し、黄金色の鱗を眩いばかりに輝かせ、昨夜見た真紅の目を伏せて眠っている。
人の身体にしっかりとその身体を巻き付けて。
蛇神であるが故に春先とはいえ、まだ雪の残るこの季節の寒さは厭わしいのだろう。
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