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携帯が鳴った。地元の秘書からだった。階下に着いたらしい、今日は、わざわざ葉谷市から迎えに来てくれたのだ。
慌ててすぐ下りると答え、切った。そして漣の髪に手を伸ばしてかき乱し、ついでに軽く抱きしめる。
さあ、これで充分だ……そう自分に言い聞かせ、いつまでも抱きしめていたいその身体を離した。
「行ってくる」
力強く笑って言うと、漣も笑みを返してくれる。
「頑張れ!!」
くしゃっと表情をほころばせる、峻介の大好きな笑顔だった。
3階の部屋から階段を駆け下りながら、峻介は早くもその陽だまりのような笑みを思い返し、つい、頬が緩むのを止められない。
長い戦いの中、自分は何度もあの笑みと、あのキスと、抱擁を思い返し、力漲る気持を取り戻すのだろう。
漣と出会って以来、いつもそんな風にして峻介は日々を乗り越えてきた。
だから、今度も大丈夫だ。
絶対に、勝てる。
はかりしれない恋の力を、君に、もらったのだから……。
―END―
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