アフターストーリー1

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アフターストーリー1

「父ちゃん、そろそろ起きろ。休みだからって寝すぎだぞ!!」  小さな手に揺り起こされ、天宮漣(あまみや れん)は、うっすらと目を開けた。 「あ……ああ、悪い……。何時だ? 今」  掠れ声で答え、起き上がる。  ぐしゃぐしゃと髪をかき乱しながら、再び落っこちそうな瞼をどうにか上げた。ぼんやりとした視界に映る光景がいつもと違う……ような気がする。  その違和感の正体に気づき、彼はぎくりとした。 「…ってか、何で峻介の部屋で寝てんだ、父ちゃん」  呆れ顔の息子に訊かれ、一瞬のパニックに陥る。  彼が恋人の部屋で寝ていた理由と言えば、もちろん、ひとつしかない。しかしそれは、とても6歳の子供に聞かせられる理由ではなくて……。 「いや……あの…ゆうべ、城築さんと話し込んじまって……」  しどろもどろに言い訳しながら、漣は反射的に自分の身体を見やった。  よかった、裸ではない。Tシャツにボクサーパンツというギリギリの恰好だが、まあ、ギリギリ許される格好だろう。  続いて、ベッドの上を見回す。子供に見られたら困るであろう諸々の痕跡も、恋人がきれいに片付けてくれたらしい。  とりあえずそれだけのことを確認し、漣は小さく息をついた。 「朝飯はもう食ったか? 大志」  いまだ不審の目を向ける息子にこれ以上何か訊かれないよう、そう尋ねると、大志は「とっくに」と答えた。 「峻介が作ってくれた。父ちゃんの分もあるぞ」  そう言い残してなぜか慌ただしくリビングに駆け戻る息子を見送り、漣は、はーとため息をつく。  壁の時計は10時近くを指していた。確かに、いつも早起きの自分たちにしては、相当遅い時間だ。  どうやら、やっちまった……らしい。
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