アフターストーリー1

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 もちろん今朝の場合、責任の一端は、どう考えても昨夜自分を寝かせなかった恋人にある。だからこそ彼も漣を起こさず、諸々の後始末をして朝食まで作ってくれたのだろう。しかもメニューは、漣の好きな目玉焼き入りBLTスペシャル。  これって、愛だよな。絶対に、愛だ……。  少しばかり胸を熱くしながら、そして、一緒に起きなかったことを少しばかり後悔しながらリビングの方へ行くと……。  テレビの中に、恋人がいた。  前のソファには大志が座り、熱心に画面に見入っている。  そうか、これが始まるから、さっき急いで戻ったんだな……。  そのおかげで、あれ以上不審に思われずにすんだのだ。何のことはない、またしても恋人に助けられたと言える。  漣は苦笑しながら、コーヒーとサンドイッチの皿をテーブルに置き、大志の傍らに座った。 「面白いか?」  手を伸ばして、くしゃっと息子の頭を撫でながら尋ねると、彼は当たり前だろうという一瞥をよこし、すぐにテレビに視線を戻した。  どうやら要らぬタイミングで要らぬことを訊いてしまったらしい。漣は再び苦笑し、コーヒーを飲みながら息子の真剣な横顔を眺めた。  そうなのだ、1か月に一度のこの番組を、この子供はいつも心待ちにしている。  『月刊キッズ・ニュース・ショー』。ひと月の間にあった様々なニュースを、大勢の子供たちを前にライブ形式で解説するという異色のニュース番組だ。漣の恋人は、その司会を務めているのだった。  わかりやすい言葉を駆使して子供たちをうなずかせ、彼らから次々に寄せられる質問にほぼアドリブで答えるという難しい役回りを、峻介はいつもながら鮮やかにこなしている。  思わず、その姿に見惚れた。  やっぱ、格好いいなあ、城築さん……。
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