アフターストーリー2

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アフターストーリー2

 6月、日本に新しい政党が誕生した。  党名は「真実進歩党」。新党とは言っても、当時の与党であった国進党から元総理を初めとする大物議員や実力派議員が党を飛び出し、結成した超大型新党だった。  かつては国進党所属の議員として活躍していたものの、わけあって党を追われ、議員の職を失っていた峻介は、彼自身の父を初めとする党幹部のたっての願いで、創設と同時に真進党に入党した。そしてほどなく行われることになった総選挙で、かつての選挙区であった東京26区から立候補したのだった。  結果は、圧勝。この選挙そのものがかつてなく注目を集めた選挙であったし、中でも峻介はタレント並の人気を持つ政治評論家として抜群の知名度を得ていたから、当然の結果だったかもしれない。  しかし、昔から圧倒的に国進党が強い地盤での戦いということもあり、ふたを開けてみるまで結果はわからないと言われていた。漣も開票直前までハラハラさせられた。  選挙当日、自宅から車で1時間ほどの場所にある恋人の選挙事務所に、漣は行かなかった。  この選挙における城築峻介の注目度は半端ない。当日の事務所には、テレビを初めとするマスコミが大挙して押しかけることが予想された。そんな場所に同性の恋人である自分がのこのこと出かけて行けば、否応なく目立ってしまう。静かに穏やかに生きてゆきたい漣にとって、それはどうしても避けたいことだった。  それに、翌日には仕事もある。彼の職業である鳶はハードな肉体労働だ。前日夜遅くまで遠方にいては、とても務まらない。しかしだからといって、その仕事を休んで恋人と共にいるのも、どうしても違う気がした。  自分の職業は決して「政治家のパートナー」ではない。峻介の隣でいつもしっかり立っている自分でいるためにも、けじめはつけておきたかった。  気持の上では、応援に飛んで行きたいという衝動を、何度も堪えねばならない漣だったが。
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