アフターストーリー2

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 初めて峻介の姿を見た時のことを、漣は今でもよく覚えている。  漣が働く工事現場に大勢の議員と共に視察に来た彼は、同じようにスーツを着てヘルメットをかぶった男たちの中で、なぜだか1人だけ際立って見えた。名前すら知らない、彼が「峻さま」と呼ばれるイケメン人気議員であることも当然知らない。なのに、彼のまとう空気は、色が違って見えるような気がした。  しかしそれはまあ、一瞬だけの感覚で、その後すぐに漣は仕事に没頭し、いつものごとく、すべてを忘れてしまったのだが。  何しろその日はやたら忙しかった。現場監督が議員たちの相手に忙殺され、ろくに指示も出せない状態だったのが忙しさに拍車をかけた。その時頭として作業をまとめていた漣は、苛立ちをMAXにしていた。  そこを助けてくれたのが、峻介だったのだ。 「城築議員……」  さりげなく手を上げて、その場を仕切っていた父親(であったことはその後知った)の注意を促してくれた彼に、思わず視線が吸い寄せられてしまったことを、今でも漣は覚えている。  ただし、元々ゲイではない彼がそれを「一目惚れだった」と自覚するのは、ずっと後になってからのことだ。それどころか、その時は、名前も知らないままただすれ違うだけの2人であるはずだった。
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