アフターストーリー2

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 しかしその後、奇跡としかいいようのない様々な出来事が起きて、2人は思いを通じ合わせることになった。  その時にはもう、自分が彼を好きでしょうがないことをとっくに自覚していた漣だったから、最初のうちはただひたすら夢見心地だった。同性だろうとなんだろうと関係ない、怖いものなど何もないと思っていた。  しかし、そう長くは経たないうちに、彼は現実を思い知らされることになる。  あるできごとをきっかけに、気づいてしまったのだ。同性である自分が恋人として峻介のそばにいることは、彼の将来の妨げにしかならないのだということに……。  そしてその懸念どおり、峻介の政治家としての未来はある日突然絶たれた。生放送のテレビ番組でゲイであることをカミングアウトし、結果として、そのことが原因で政界を追われたのだ。  その当時のことを漣は何も知らない。政治という仕事に誰よりも打ち込んでいた峻介が、どれほどの無念と共にその職を手放したか、想像することはできても、実際に共に居て、その無念を見、感じることはできなかった。ましてや窮地に立たされた恋人の力になることもかなわなかった。  その時漣は仕事中にビルから落ちて重傷を負い、昏睡状態に陥っていたからだ。  漣が目覚めた時にはすでに、恋人はたった独りで全てを乗り越え、笑顔で傍らにいた。そして微塵の迷いもなく、「君のおかげで僕は本当の自分を取り戻せた」と告げたのだった。  もちろん、その言葉に嘘はなかったと思う。その後、実家を出て自分たちと共に住み始めた峻介は、吹っ切れたようにいきいきとその生活を楽しんでくれていたのだから。  しかし、だからこそ漣は、後ろ向きなことを言えなくなってしまった。
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