アフターストーリー3

1/7
前へ
/425ページ
次へ

アフターストーリー3

 そんな風に、多くの困難の末に結ばれたと言えなくもない2人だったが、今は、至って平和な日々だ。  一緒に暮らし始めて半年あまり。息子の大志も周りの人たちも、2人の関係を理解してくれているし、恋人はひたすら優しい。  議員になってからは確かにひどく多忙にはなったが、峻介は常に自分たちのことを一番に考えてくれている。『キッズ・ニュース』の仕事だって、大志が楽しみに見ているからこそ、無理をしてでも続けてくれているのだ。幼い大志に、少しでも政治のことを理解してもらえればと。  そして、どんなに忙しい中でも、少しでも時間ができれば彼は漣を抱きしめ、受けとめかねるほどの愛を注いでくれる。そう、昨夜のように。  なんの問題もない……そう感じているはずなのだったが……。 「父ちゃん、今日は何時に出るんだ?」  番組がCMになったとき、大志が尋ねてきた。漣は少し考え、答える。 「そうだな、午後からでいいって言ってたから、昼飯食ったら出るか。1時ぐらいかな」 「わかった」  と大志は答え、再びテレビに視線を戻した。その横顔がちょっと嬉しそうだ。口には出さないが、久しぶりの遠出が楽しみらしい。  思わず微笑ましい気持になり、漣は少し表情を緩ませて息子のふわふわした髪を再びくしゃっとかき乱した。  しかしすぐに笑みは消える。  『キッズ・ニュース』はライブ形式の番組だが、実際の生放送ではないので、今の峻介が本当にテレビの中にいるわけではない。生身の彼は朝から議員の仕事で、自らの選挙区である東京都葉谷市に出かけていた。  そして今日は午後から、漣と大志も彼に落ち合うことになっている。  昔から峻介が世話になっている彼の叔父、古箭草准に会うためだった。
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2738人が本棚に入れています
本棚に追加