アフターストーリー3

2/7
前へ
/425ページ
次へ
 叔父とは言っても若く美貌の日本画家であるらしいその男と自分の恋人が、かつて身体の関係にあったことを、恋人自身から打ち明けられたのは、付き合い始めて半月ばかりが経った頃のことだ。  何がきっかけだったかは忘れた。それぐらいさらりと、何かの話のついでといった風情で、峻介はそのことを話したのだった。「そのうち会うこともあるだろうし、会えば君は気づいてしまうだろうから」と。  まあ、過去の話だ。確かに、変に隠されているよりはずっといい。さほど気にもならなかった。  だいたい自分だって、恋人の過去をどうこう言えた立場ではないのだ。  この街で生まれ育った漣には、いわゆる「元カノ」が今も地元に何人もいる。今は大志の友達の母親となったその女の子たちと峻介が親しげに話すのを見て、落ち着かない心地になることもある。  それだけではない。いきがっていた中学から高校の初めにかけては、主に断るのが面倒だという理由で、不特定多数の女の子と寝ることもあった。今も街で時おり出会うその子たちと峻介が、にこやかに挨拶を交わすのを見て、落ち着かない心地に……いや、きりがない。考えてみればこの街は、地雷だらけじゃないか。  俺って、もしかして、最低な男なのか……?   結局そちらの方が気になって、その時は、峻介の「告白」を気にする余裕もなくなってしまったのだけれど。  その後、一緒に暮らすようになって、峻介は何度か漣を叔父の家に誘った。「あの人が君たちに会いたがっているから」と。  漣はといえばその都度、仲間との集まりがあったり、翌日の仕事の準備があったり、どうにもタイミングが合わずここまできてしまった。  それだけのことだ。それだけのことで、まったく他意はない。なのに、少しばかり深刻な顔で、峻介に訊かれてしまったのだ。  「やはり君は、僕と草准さんのことを気にしているのか」と。  一昨日のことだった。
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2738人が本棚に入れています
本棚に追加