アフターストーリー3

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 当然ながら、漣は面食らった。どう答えてよいかわからず、「いや、別に……」と、しどろもどろに言葉を返すと、「そうか」と、峻介は笑みを見せた。 「いや、あの人が、君たちに会わせろと最近ますますしつこいんだ。もちろん、君が嫌なら、あの人が何と言おうと知ったことじゃないんだが……」  そうして彼は、不意に真剣な瞳をして言ったのだった。 「ただ、僕は、君自身のために、君にあの人に会って欲しいと思っている」 「え……?」  わけがわからず、漣は目を瞬かせる。峻介は少し困った顔をした。 「どう説明すれば良いのか、わからないんだが……。でも、とにかく君は、会うのが嫌ではないんだろう?」  確かめるように訊かれ、ここで当然嫌と言えるはずもなく、漣はうなずく。 「別に、ぜんぜん、嫌ってわけじゃないよ」  峻介は再び、「そうか」と笑った。 「なら、明後日の土曜日。僕は朝から選挙区で仕事だが、午後は空いている。君の都合はどうだ?」  唐突にたずねられ、漣は焦って記憶をたどった。  ない、何もない。仲間の誘いも、仕事の準備も。  何もないのかよ……そう思ってしまっている時点で、なんだか自分の本音が見えてきている心地のした漣だったが。 「……ああ、あさってなら、大丈夫だと思う」  そう答えると、峻介は表情を明るくした。 「助かるよ。本当に最近あの人はしつこくて、困っていたんだ。ありがとう、漣」  惚れ惚れとするような笑みと共に、礼を言われ……。  「してやられた」ような気持になってしまったのは、なぜだろう。  そうして、自覚せざるをえなくなった。  なんだかもやもやとしてしまっていることを。  さらには、向き合わないわけにはいかなくなった。  この、もやもやの正体に……。
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