アフターストーリー3

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 それだけの話をすませると、峻介は慌ただしく再び仕事に出て行った。いや、話だけではない。話をしながら、大志の好きなオムライスを手際よく作り、置いていってくれた。  グリーンピースとマッシュルーム入りのチキンライスを薄焼き卵でくるんだ、昔ながらのオムライス。作り置きの炒め玉ねぎで作ったオニオンスープもある。深いブラウンにぱらりと落としたパセリの鮮やかな緑が、なんともいえず美しい。  議員の仕事に追われるようになってから、彼はときおり、「急に時間ができた」と言っては、ひょっこり夕方に帰って来て、短い時間で食事の支度をしてくれるようになった。  そうして自身はそれを食べる暇もなく、風のように去ってゆく。  申し訳なく思いながらも、漣はやはり嬉しい。食事を作ってくれるのも嬉しいが、思いがけず恋人に会えることが嬉しい。そしてその気持が何よりも嬉しい。  あーっ!! やっぱり大好きだ。城築さん!!  さっきまでのもやもやを一瞬忘れ、思わず心で叫んでしまった漣だが……。  その一方で、気づいてもいた。  「好き」という気持が過ぎるのは、あまり良いことばかりとも言えないことに。
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