アフターストーリー5

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アフターストーリー5

 そして、翌日の土曜日……。  『キッズ・ニュース』を見終わった大志と共に簡単に部屋を掃除し、昼食を済ませた漣は、息子と連れ立って家を出た。 「できれば君には飲んでもらたいな。帰りは僕が送るから、面倒でなければ電車で来ないか?」  峻介にはそう言われていた。確かに素面ではちょっときついような気がしていたから、漣はその言葉に従うことにして、いつものワゴンは置いて行った。帰りは峻介の仕事用の車で帰ることになるだろう。  気持の良い10月の晴れた日。どこからか、金木犀の匂いがする。駅までの道中で、漣はもう、割り切ることに決めた。とりあえず向こうに着くまでは、あれこれ考えずこの遠出を楽しもうと。  電車に乗るのはそう面倒でもなかった。久しぶりの遠足気分だ。1時間と少しの道中の初めは、学校のことなどをあれこれと話す大志の言葉に耳を傾けた。考えてみれば、息子とこれほどゆっくり話をするのも、久しぶりかもしれない。  しかし電車に揺られて20分も経たないうちに、大志は父親の肩にもたれて寝息を立て始めた。まったくどこにいても寝付きの良すぎる奴だと呆れる。  少しずつ緑が増えてゆく景色を見ながら、漣はぼんやりと物思いにふける。  峻介を訪ねて葉谷に行くのは、考えてみれば、2度目だ。  最初は、選挙戦真っ最中の夏、自分たちと離れて長い戦いの日々を過ごしていた恋人に、応援を兼ねて会いに行った。文字通りの「陣中見舞い」だ。あの時は車だった。
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