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「だいたい僕は、過去のことなど内緒にしておけと言ったんだ。なのにあいつは、あっさり話してしまいやがって……」
その言葉に思わずカチンときて、漣は言葉を返した。
「俺は、変に隠されてるより、話してもらえてよかったって思ってるよ。城築さんは自分に都合の悪いことだからって黙ってるような人じゃないし」
「そうだな、峻は嘘のつける男じゃない……。が、しかし――」
そう言って草准は不意に、視線を落とした。
「おかげで僕はすっかり君に嫌われてしまった。正直、それが、かなり辛い」
その寂しげな表情に決して嘘はないような気がして、漣はわけもなく焦る。
「き…嫌ってるわけじゃねーけど……。でも、何であんたが、そんなこと気にすんだよ。別にどうでも良くないか? 俺のことなんか」
どう考えてもわからない。この男にしてみれば、自分の親戚だか元彼だか元セックスフレンドか知らないが、とにかくそうした関係だった相手の現在の恋人が、自分のことを好いていようが嫌っていようが気にすることもないはずだ。
むしろ、嫌われて上等……という気持になるのが普通なんじゃないだろうか。
しかし草准は、少しばかり血相を変えて言葉を返してきた。
「どうでも良くなんかない。僕にとって君は、決して、どうでもいい存在なんかじゃないんだ」
強く繰り返され、漣は目を瞬かせる。
草准は、怒涛のように話し出した。
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