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「峻が君と出会ってからというもの、僕はあいつから、さんざん君の話を聞かされてきた。最初は単なる惚気だと聞き流していたが、あいつが語る君の姿には、どうにも心惹かれるものがあってね。暴走族という過去を乗り越え、立派に仕事について、ひとりで子供を育てている君を心底すごいと思ったし、とんでもない高所でも動じない君の仕事ぶりを聞いて、思わず惚れそうになった。どうやら君は初めから峻にベタ惚れらしいのに、あいつがまったく君の気持に気付いていなかった頃は、可哀想でしょうがなかったし、ようやく結ばれたと聞いて、自分のことのように嬉しかった。その後君がビルから落ちて昏睡状態になった時にはもう、胸がつぶれそうになったし、目覚めたと聞いた時には思わず泣いて……いや、すまない」
これだけ話してしまってから、草准はようやく話し過ぎに気付いたらしく、我に返ったように詫びたが、漣は、呆然とするばかりだった。
城築さん、どんだけ俺の話ばっか、してんだ……?
まずはそのことに呆れつつも、そして少しばかり胸が熱くなりつつも……。
やはり心を動かされたのは、本当にそこまで自分のことを思ってくれていたらしいこの人の、嘘のない「告白」だったかもしれない。
「まったく、すまない。僕は相当気持の悪いことを言っているな。しかし……」
少しばかり顔を赤くして、草准は続けた。
「君には迷惑な話だろうが、僕はずっと君のことを、勝手に自分の家族のように思っていたんだ。そんな君に初めから悪い感情しか持たれていないのは、本当に辛い」
「い、いや……迷惑なんてことねえよ。どっちかっていうと、むしろ……」
漣もまた、赤くなって、言いよどんだ。
むしろ……嬉しい、かも……?。
そこまではさすがに口にすることはできなかったが、それだけで草准の顔は、ぱっと明るくなる。
「本当か? 漣……くん――」
「べ、別に、漣でいいよ」
ぼそぼそと呟くと、その表情は、さらに明るくなった。
「嬉しいな。漣、本当に、君を家族だと思っても迷惑じゃないか?」
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