アフターストーリー7

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 そう言って草准は漣の手を両手でぎゅっと握った。冷たいほどに整ったその顔が、身も世もなく笑み崩れる様を目の当たりにして、漣は思わずどぎまぎする。  やばい……。  この人、めちゃくちゃ可愛いじゃねーか。  否応なく、胸の中があたたかくなる。  君自身のために、あの人に会って欲しい……と言った峻介の言葉の意味が、今になってわかった。  この人は確かに、自分の味方だ。そして家族だ。つまらない嫉妬心のために遠ざけてしまうには、あまりに惜しい存在に違いないのだ。  感動のままに言葉を返そうとした時、扉が開いた。 「そ…草准さん、あんた、何やってんだ!!」  狼狽しきった恋人の声が響く。漣は慌てて、草准に握られた手をぱっと離した。 「き、城築さん……大志は……?」  そう尋ねると、峻介は引きつった顔を少しだけ緩めた。 「大丈夫だ。近所の子供と仲良くなって、家の前で遊んでいる」  そう答え、再び険しい表情を草准に向ける。 「あんた、いつ宗旨替えしたんだ? 俺は漣をここに連れて来はしたが、口説いていいとは言ってないぞ」 「別に宗旨替えはしていない」  先ほどの健気な表情はどこへやら、草准は不敵な笑みを浮かべて言った。 「この子は立派な男の子だよ。抱かれるのも悪くないと思ってね」  とんでもない言葉を口にされ、漣は慌てる。 「ご…ごめん、草准さん。あんたのことは嫌いじゃない…ってか、どっちかっていうと好きになれるかもしんないけど、さすがに、抱きたいとは……」  またしても落胆されるかと思い焦ったが、草准は、不敵な表情を崩さなかった。 「まったく、君は可愛いな」  そう言って、あろうことか、漣の肩に手を回して力強く抱きしめる。 「やっぱり宗旨替えすることにしたよ。この子のことなら、僕は、抱ける……」  草准が最後まで言い終わらないうちに、峻介は漣を彼から引き離した。
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