アフターストーリー7

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「冗談じゃない! 帰るぞ、漣」 「え……え? 城築さん――」  今度は恋人に強く肩を抱かれ、戸惑いつつも漣はその顔を見上げる。その表情は、明らかに本気の怒りの色を浮かべていて……。  しかし草准は、そんな甥の言葉をまったく気にする様子もなく、屈託のない表情で口を開いた。 「峻、街に出るなら、マスタードを買ってきてくれないか。今日はポトフを作ったんだが、うっかり買い忘れてしまってね」  君の恋人のために、特上のワインも買ってある……その言葉に、ぴくりと肩を動かす気配もしたが、峻介は何も言わず漣の肩を抱いたまま部屋を出た。漣は思わず振り返り、草准を伺ったが……。  心配するな…と言いたげに、彼は漣に片目を瞑って見せたのだった。  もしかするとこの人は、峻介がなりふりかまわず嫉妬心をあらわにする様を、自分に見せたかったんじゃないだろうか……。  うーん、転がされてる感ハンパねーぞ、城築さん。  とはいえ、そんな恋人のヤキモチをたまらなく嬉しいと思ってしまったのだから、漣もまた、既にあっさりと転がされてしまっているのかもしれなかったが。
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