アフターストーリー8

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アフターストーリー8

 外に出ると、峻介が言った通り、大志が家のすぐ前で近所の子たちとわいわい遊んでいた。  どうやら魚は獲れなかったらしい。そして、こんな自然に囲まれた場所でも、子供たちの遊びはカードバトルであるらしい。肌身離さず持ち歩いている宝物のカードを手に勝負に興じる大志は、ずっと以前からこの土地にいるかのように、すっかり彼らに馴染んでいた。 「大志、ちょっと買い物に行ってくる。すぐに戻るから、君はここで遊んでいてくれないか」  峻介は少し落ち着いた表情になって、大志に声をかけた。とりあえず帰るのではないのだと、漣はほっとする。 「疲れたらみんなで中に入って、草准さんに飲み物でももらうといい」  うなずく大志に、峻介はそう続けた。  どう考えても子供好きではなさそうな草准が、子供たちに囲まれて目を白黒させる様を想像し、漣は思わず笑ってしまう。 「仕返しだ。子供の相手をするあの人が見られないのは、ちょっと残念だが……」  漣の胸の内がわかったらしく、峻介はそう言って、少し笑った。  峻介が乗って来ていたのは、公務に使うセダンだった。「国民目線」がモットーの真進党らしく、そう高級な車ではないが、それでも少しばかり落ち着かない気持で漣は助手席に乗り込む。  来た時と同じ山道を、滑らかに車を繰って街の方へと下りながら、峻介はきまり悪げに口を開いた。 「漣……、見苦しいところを見せて、すまなかった」 「い、いや……」  漣はあわててかぶりを振る。実は嬉しかった……などとはさすがに言えなかったが、少なくとも気を悪くしているわけではないことは、何とはなしに伝わったのだろう。峻介はその横顔にほっとしたような笑みを浮かべた。
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