アフターストーリー8

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 あの日、漣は、昔付き合っていた女の子に、かなり積極的に迫られていたのだった。そこに来合せた峻介は激怒した。あの時の彼も別人のようだった。  しかし自分の気持が片想いだと思っていた漣には、なぜ峻介がそこまで怒っていたのか皆目わからず、混乱する気持のままに彼は自分の感情をぶつけ、そして……。  今思い出しても赤面するしかない。  あの時城築さんがあそこまで怒ってたのは……まさか、そういうことだったのか?  漣が気づいたことで、いたたまれなくなったのだろう。ハンドルに頭を伏せ、漣の顔を見ないまま、峻介は詫びた。 「妬いてたんだ、僕は。嫉妬のあまり、君にあんな乱暴なことをせずにはいられないほど……。今さらだが、本当にすまなかった」 「いや…ほんとに今さら……。そんなに、謝んなくても……」  漣は焦り、しどろもどろに言葉を返す。 「――というより君は、嫉妬以外のどんな理由で、僕があれほど怒ったと思っていたんだ?」  顔を伏せたままの恋人にもっともな問いを投げられ、漣はさらに焦った。 「わ、わかんねーけど。でも、城築さんは絶対に妬いたりなんかしない人だと思ってたから……」  だから実をいうと、その件はずっと彼の中では謎のままだったのだ。  というより、あれからいろいろなことがありすぎて、そんな疑問はいつの間にか記憶の淵に沈んでしまっていた、というのが正しいのかもしれないが。 「せっかくの君のイメージを壊してしまうのは、まったく不本意だが……」    峻介は顔を上げ、小さくため息をついて言った。 「僕は君に関してだけは、かなり嫉妬深い男なんだ。君の過去のことはどうにか受け入れられても、今、君に手を出す者がいるとなると、とても冷静ではいられない。また取り乱すこともあるかもしれないが、許してくれないか」  峻介らしい生真面目な告白に感動を覚えかけた漣だったが、ん? と引っかかるものを感じ、恋人の横顔を見る。  今、城築さん、「君の過去のことは……」って言わなかったか?
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