アフターストーリー9

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 結局、草准の強い勧めもあって、その夜はこの家に泊まらせてもらった。翌日も漣と大志は休みだったし、峻介は選挙区での仕事があったから、ちょうどよかった。  少し遅い朝食を4人で囲んだ後、峻介は慌ただしく仕事に出かけて行った。泊まると決まってからは、自分たちに追いつかんばかりに結構な量のワインを飲んだはずの彼だが、そんな名残など微塵も見せない爽やかな笑顔とタフさはさすがだ。  大志もまた、今日も近所の子たちと遊ぶべく、外に飛び出して行く。手持ち無沙汰になった漣は、少しだけ草准の畑仕事を手伝った。  ほんとマジで田舎のおばあちゃんちだな、と、可笑しくなってしまう。  こうした場所があるのは、嬉しいことだと思った。自分のためにも、息子の大志のためにも。  僕は、君自身のために、あの人に会って欲しいと思っている……。峻介の言葉を再び思い出す。  本当にそうだとしみじみ思った。  城築さん、あんたの言うことは、本当にいつも正しい。  一仕事終えて縁側で休んでいると、草准が冷たい飲み物を作ってくれる。自家製のシロップを炭酸で割ったジンジャーエールだった。もはや何が手作りでも、驚かない。  グラスを手に2人並んで座り、遠く霞む街並みを眺める。もう沈黙は気にならなかった。しかし草准はいくらも経たないうちに、話し出した。 「泊まってもらえてよかった。もう少し君と話がしたいと思ってたんだ。昨日はなんだか慌ただしかったからね」  昨日の峻介の、あのとんでもない妬きっぷりを思い出しているのだろう。少しだけ笑いを堪えたような顔をする。  今朝も出て行く時、峻介は草准に「絶対におかしな真似はするな」と真剣な顔で釘をさした。そして漣にも、「くれぐれも気をつけてくれ」と何度も言い置いたのだった。  どうやら本気で、叔父が恋人に手を出すかもしれないと思っているらしい。
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