アフターストーリー9

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「すまない。僕が君の味方だということをわかって欲しくて、つい……」  困ったように続けるその白皙が、ますます赤みを帯びる。漣は少しばかりどぎまぎしながら、「それはもう、わかってる…」とどうにか答え、話し出した。 「あんたと城築さんは10年以上も、その……寝る関係だったって聞いてる。1人の相手とそこまで長く関係が続いたんなら、それはもう、恋人だろう。なのに城築さんはそうじゃなかったって言い張る。あんたと会って、心配するようなことは何もないってのもわかったけど、だからこそ、よけいにわからなくなっちまったんだ」  そうなのだ。この家に来て、安堵と同時に解せない思いは強くなった。草准に指摘されるまで、深く意識はしていなかったことだが。  今、自身の気持を探りながら言葉を繋げる漣を、草准は静かに見守っている。 「もし、気持があったんだったら、どうして城築さんはそれをあんなに否定するんだ? 気持がなかったならないで、どうしてあんたたちの関係はそんなに長く続いたんだ。わからないのが、なんて言うか……きつい。何いつまでもこだわってんだって言われそうだけどさ」  本当に、何をこだわってんだろうと思う。もう、2人の関係はありのままに受け止めておけばいいことなのだということは、わかっているのに。  だけど、やっぱり、ちゃんと理解したい。愛しい恋人のことがわからないままでいるのは、切なく、辛い。草准に会い、疑念が解けてもなお、そんな気持が心の底に沈んでいたことに、漣は話しながら気づいた。  草准は笑って首を横に振った。 「いや、わかるよ、君の気持は。だから僕は、どうせ話すならもう恋人だったってことにしておけと……ああ、すまない。君は峻に嘘をつかれたくないんだったっけ……」 「い…いや、いいよ。昨日は逆にほんと悪かった」  その関係をふたりだけの秘密のように話されて、思わず噛みついてしまったことを思い出し、漣は詫びた。昨日のあの言葉も、何より漣自身の気持を思いやってのことだったのだと、今ならわかる。  俯いてしまった漣を見て草准はふっと笑い、立ちあがる。 「昔の写真でも見るか?」  そう言って草准は、古びたアルバムを持って部屋に戻った。
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