アフターストーリー11

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「昔の話を聞いて、俺は、もっと、城築さんのことが大好きになった」 「漣……」  峻介は少し驚いたような瞳で、漣を見つめた。熱を持った頬に手のひらを当てられ、ますますぼっと体温が上がる。 「君たち、そういうことは家に帰ってから、やってくれないかな」  からかうような声に振り返ると、草准が湯呑の載った盆を手に、居間の入口に立っていた。漣は慌てて恋人から離れる。 「まったく、独り者には目の毒だ……」  飄々とした口調で言いかけたところで、漣の瞳に残る涙に気付いたのだろう。草准は慌てたようにガチャンと盆を置き、漣の傍に座り込んだ。ひどく狼狽えた顔をしている。 「ど、どうしたんだ、漣。もしかして峻に苛められたのか? まったく、ひどい恋人だ」  そう言ってきっと顔を上げ、帰ってきたばかりの甥を睨む。い…いや、そういうわけじゃなくて……と、漣が焦って説明しようとする前に、峻介は憮然とした顔で答えた。 「あんたがいろいろと格好の悪い話を聞かせるから、俺の恋人が、こうなっているんだろう」  精悍さの増した口調で「俺の恋人」などと言われ、漣の頭は沸騰寸前になる。  真っ赤になって黙り込む漣を見て、草准は「そうか…」と、納得したように表情を緩めた。 「なら、感謝してもらわないといけないな」  すっかり涼しい顔に戻って2人の前に湯呑を置きながら、草准は言った。 「恋人の昔の話をこの子に聞かせるのも、『親戚のおじさん』の大事な役割だろうからね」
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