アフターストーリー11

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 車が走り出してしばらくの間、大志は父親や峻介に問われるまま、楽しそうに新しく出来た友人たちのことを話していた。しかしいつものごとく次第に口数は少なくなり、やがて後部座席から小さな寝息が聞こえ始める。  結局この子供は、草准宅での少なからぬ時間を外で近所の子供たちと過ごしたことになる。どこへ行っても仲間をつくることに長けた子供だが、ここまでとは思わなかった。知らないうちに、息子もたくましく成長している。  ハンドルを握る恋人には「君も寝ていてかまわない」と言われたが、眠れるはずもなかった。話したいことが胸にあふれ過ぎて……。  ただ、何もかもが言葉にするのは難しい事柄ばかりだった。とにかく感謝の気持だけは伝えたいと、漣は口を開く。 「ありがとな、城築さん。ここに連れて来てくれて……。俺は何だかあの人のことが好きになったよ」  峻介からの返事はなかった。またしても妬かせてしまったのかと思い、漣は少しだけ焦る。しかし信号待ちで車を止めた時、彼は不意に手を伸ばして漣の手を握り、ほっとしたように息をついて、言った。 「そう言ってもらえて……よかった……」  そうして再び運転を続けながら言葉を繋ぐ。 「僕はずっと、草准さんは君の一番の味方になってくれるに違いないと思っていたんだ。今の君には、あの人のような味方が何より必要だと思った」  だから、君自身のためにどうしても、僕は君にあの人に会ってもらいたかったんだ……。  再び繰り返されたその言葉は今、何よりの実感を持って漣の胸に響く。 「まあ、少し……いや、かなり妬けるけどね。僕もまだまだ修行が必要だ」  峻介はふっと表情を緩めてそう続け、しばらくの間、その横顔に苦笑をまとわせていた。
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