アフターストーリー12

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アフターストーリー12

 途中で翌日の買い物などを済ませて、家に帰りついた時にはもう、すっかり日は暮れていた。  草准からもらった食材を使って峻介が簡単に整えた夕食を取った後、大志はいつものごとく、ひとりでさっさと風呂に入って寝てしまう。漣が部屋に様子を見に行くと、寝落ち寸前の息子は眠そうな顔で笑って父親に言った。 「すげえ楽しかった。また行きてーな。草准のとこ」  都会育ちの大志にとっても、あの場所で過ごした時間は楽しく新鮮なものであったらしい。漣は「また行こうな」と答えて、ほぼ眠りに落ちかけている息子の髪をくしゃっと撫でた。  LDKに戻ると、漣の後に風呂に入った峻介がキッチンカウンターで寛いでいた。前には草准宅からもらってきた昨日の残りのワインが置いてある。「君も飲むか」と勧められて、おとなしく隣に座り、注いでもらうことにした。  昨日今日とあまりにも、いろいろなことがあり過ぎたからだろうか。昨夜あんなに飲んだにも関わらず、今日もまた少し酔いたい気分になっている。峻介も同じだったのかもしれない。  風呂上がりの恋人は、ダークグレーのスウェットの上下というラフな格好でありながら、全身にまとわせている寛いだ空気がたまらなく魅力的だ。グラスを口に運ぶその横顔は、いつになく柔らかい表情を浮かべている。  いつもながら、いくら見ていても見飽きない端整な横顔だけれど、昨日と今日はまた違った様々な顔を、この人は見せてくれたような気がする。そんなことを思い出しながら、何とはなしに見惚れていると、不意にこちらを向いた恋人と間近に視線が合った。 「いや……あの……」  別にそんな必要もないのにわけもなく焦りながら、漣は考えていたことをそのまま口にしてしまう。 「草准さんちにいる城築さんって、なんかいつもと違うっていうか、すげえ新鮮だったなって思って……」  「そうか……」と峻介は少し顔を赤くした。 「まあ、確かにいろいろと格好の悪いところを見せてしまったような気はしているが」 「そ、そういうことじゃないんだ。その……喋り方とか……」  漣はますます焦って言葉を返す。
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