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頭の中が真っ白になりかけた瞬間、不意に身体を離された。
絶頂に近い快感をいきなり断ち切られ、漣は激しく息を切らしながら恋人を見上げる
。
峻介はなぜか、呆然とした顔で漣を見つめていた。
「き……づき、さん……?」
声にならない声で名前を呼ぶと、峻介もまた、同じように声にならない声で問いを返してくる。
「れ、漣……君は、今……、なんて――?」
「え?」
虚を突かれ、そして、はっとする。
わけがわからなくなってしまうほどの気持良さの中、つい、恋人の名前を呼んでしまったのだ。
峻……と……。
「わ、やば……草准さんにつられたかな」
わけもなく焦り、しどろもどろに呟いた。確かに今日はずっと、その呼び方を何となく素敵だと思ってはいたのだが。
草准さんの影響力、パねぇ……。思わず感心しかけたが、それどころではない。
「ご、ごめん、こんな時に呼ばれたら、なんか変な感じだよな。悪かった……」
漣は慌てて詫びた。いきなり身を引いたほどだ。よほどの違和感だったのだろう。
しかし峻介は、わずかに血相を変えて言葉を返してきた。
「何を言ってるんだ。同じ呼び方でも、あの人に呼ばれるのと君に呼ばれるのでは、全然違う。だいたい、親戚の連中はみんな、僕のことを峻と呼ぶんだ。何もあの人だけの特別な呼び方じゃない」
怒涛のように言いつのられ、思わず「そうか……」と拍子抜けする。しかし峻介は短い沈黙の後、はっきりと顔を赤くして、こう続けた。
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