アフターストーリー14

3/5

2733人が本棚に入れています
本棚に追加
/425ページ
 頭の中が真っ白になりかけた瞬間、不意に身体を離された。  絶頂に近い快感をいきなり断ち切られ、漣は激しく息を切らしながら恋人を見上げる 。  峻介はなぜか、呆然とした顔で漣を見つめていた。 「き……づき、さん……?」  声にならない声で名前を呼ぶと、峻介もまた、同じように声にならない声で問いを返してくる。 「れ、漣……君は、今……、なんて――?」 「え?」  虚を突かれ、そして、はっとする。  わけがわからなくなってしまうほどの気持良さの中、つい、恋人の名前を呼んでしまったのだ。  峻……と……。 「わ、やば……草准さんにつられたかな」  わけもなく焦り、しどろもどろに呟いた。確かに今日はずっと、その呼び方を何となく素敵だと思ってはいたのだが。  草准さんの影響力、パねぇ……。思わず感心しかけたが、それどころではない。 「ご、ごめん、こんな時に呼ばれたら、なんか変な感じだよな。悪かった……」  漣は慌てて詫びた。いきなり身を引いたほどだ。よほどの違和感だったのだろう。  しかし峻介は、わずかに血相を変えて言葉を返してきた。 「何を言ってるんだ。同じ呼び方でも、あの人に呼ばれるのと君に呼ばれるのでは、全然違う。だいたい、親戚の連中はみんな、僕のことを峻と呼ぶんだ。何もあの人だけの特別な呼び方じゃない」  怒涛のように言いつのられ、思わず「そうか……」と拍子抜けする。しかし峻介は短い沈黙の後、はっきりと顔を赤くして、こう続けた。
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2733人が本棚に入れています
本棚に追加