番外編『Long Long Distance』3

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「城築さん……俺も……っ、あんたに触りたい」  自分ばかりが服を乱されているのが寂しく、そう訴えて恋人のベルトに手をかけて外し、シャツを引き出して、その背に手を這わせた。  会えない間、夢にまで見た筋肉質の肌の感触に、思わず陶然となる。再びキスを求めながら、いつしか夢中になってその逞しい身体をまさぐっていた漣だったが、長くはそうさせてもらえなかった。 「漣、君にそんなことをされると、それだけで達ってしまいそうだ」  小さく苦笑を浮かべてそう囁き、峻介は不意に漣の前に座り込んだ。そうしてごわごわとした布の感触と匂いを楽しむかのように、穿いていた七分の上から何度も中心に口づける。  あまりのもどかしさと恥ずかしさに、漣が思わず腰を揺らし、声を漏らすと、それが合図のように幅広のベルトが外され、ゆったりと仕立てられたズボンはあっという間に足元に崩れ落ちた。  そのまま性急に下着を下ろされ、恥ずかしいほどに勢いよく飛び出したものを、すかさず唇で軽く扱かれ、漣は壁に背を押しつけて、全身を震わせる。 「あ……あっ……。や……っ――。城築さん」  久しぶりにされるその行為は、やっぱり、たまらなく恥ずかしい。しかもこんなところで、立ったままでなんて、いつもならありえないことで、何だかもう訳が分からなくなる。  だから恋人が片手を伸ばして、傍らにあったビジネスバッグから小さな包みを取り出した時も、しばらくはただぼんやりと見つめているだけだったのだが……。 「き、城築さん? それ……」  不意に我に返って、漣はたずねる。峻介が唇を離して、もどかしげに食い破った紙袋から出てきたそれは、見覚えのあり過ぎるとろりとした液体の入った小瓶だったからだ。
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