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「空港で買ったんだ。買い置きが切れていたんじゃないかと思って」
峻介は立ち上がって、軽く漣にキスを落とし、困ったような笑みと共に答えた。
「今夜はどうしても君を抱きたかったから……。まさか今ここで役立つとは思わなかったが、よかった。君を傷つけなくて済んで」
いや、「峻さま」が空港のドラッグストアでそんなもの買っちゃ、ダメなんじゃ……。
心の声は、声にはならなかった。
もうそれ以上何を考えるいとまもなく、恋人の指が性急に自身の入口に押し当てられ、漣は思わず息をつめる。
久しぶりにその場所を開かれる漣を、気づかってくれているのだろう。初めはゆっくりと、ためらいがちに、滑らかな液体をたっぷりと纏った長い指が入ってくる。
確かに受け入れる感触は固く、わずかに痛みはあったが、もうそれ以上に、愛しい恋人にそこをそうされているというだけで、たまらなかった。峻介に教え込まれた快楽の記憶が身体中を駆け巡り、それだけで蕩けそうになってしまうのだ。
そんな自分の顔を間近でじっと見つめていられることが恥ずかしく、思わずぎゅっと目を瞑った。峻介は、小さく笑う気配と共に、ぐっと奥へと指を進めてきた。
「あっ……あ――っ!!」
感じる場所を刺激され、思わずあられもない声が漏れた。次々に与えられる快感に、ただもう全身を震わせ、甘い喘ぎを上げ続けるしかない。
困った……と思う。あまりに久しぶり過ぎて、自分を抑えることができない。
「漣、可愛いな……」
低い囁きに思わず瞼を上げると、欲情に蕩けた恋人の瞳とまともに視線を合わせてしまった。思わず目を奪われ、その姿に視線を走らせずにはいられない。
上品な濃いグレーのスーツを軽く乱し、蕩けるような表情で自分を貪り続ける恋人の姿はもう、壮絶な色気で……。
「あっ……や……」
その目の刺激だけで、自身の中心からたっぷりの先走りが零れる感触がし、漣は慌てた。
そして同時に思い出してしまった。恋人が今着ているのは、数十万もする高級なスーツだったということを……。
やばい……今度こそ本当に、自分はこのとんでもなく上等なスーツを、取り返しがつかないほど汚してしまう。
「や、やっぱだめだ……っ!! 城築さん!!」
いっぺんに我に返り、どうにか恋人の愛撫から逃れようと、力の入らない身体で漣はもがいた。
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