番外編『Long Long Distance』4

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番外編『Long Long Distance』4

「ど…どうした。漣……?」  突然腕の中で暴れ出した恋人に仰天し、峻介はその名を呼ぶ。力の入らないらしい手で自分の胸をどうにか押し返そうとしながら、漣は必死に訴えてきた。 「あ、あんまくっついちゃダメだ。そのスーツ……」 「スーツ?」 「今度こそほんとに……汚しちまう……」  真っ赤になってつぶやく視線の先を見て、彼が何を気にしているかを悟り、峻介はほっと息をついた。そうしてつい、頬が緩んでしまう。  こうなると少し意地悪をしてみたくなってしまうのは、いつもの悪い癖で。 「どうして、汚れるんだ?」  逃れようとする恋人を軽く壁際に追いつめて耳元に唇を寄せ、からかうように囁くと、「バ……バカヤロー」という消え入りそうな反撃の声と共に、涙目で小さく睨み上げてきた。  いつも穏やかな笑みで自分を見つめる恋人とは別人のような、その視線がたまらない。峻介は必死に腰を引こうとする漣をぐいっと引き寄せ、とっくに先走りが溢れて止まらなくなっているその中心を、わざと水音を立てるようにして、ゆっくりと扱いた。 「あっ……ほんと……っ、やめっ――出ちまう!!」  叫ぶように訴えて、どうにか身体を離そうと懸命に身を捩るその姿が可愛くてたまらず、いっそ抵抗を押し切って出させてしまいたい誘惑にかられる。しかし涙まで浮かべて必死に快感を堪えるその表情を見ると、やはり可哀想になってきて、峻介は小さく苦笑して口を開いた。 「大丈夫だ、漣。このスーツは長旅で随分くたびれてしまっているから、どちらにしても、もう使い物にはならないよ」 「そ、そう……なのか?」  漣は一瞬にして抵抗を止め、目を見開いて、ぱっと自分を見上げてくる。
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