番外編『Long Long Distance』4

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 常にぱりっとした格好をしてあちこちを走り回らねばならない政治家のスーツの寿命は、案外短い。そろそろ新しいものをあつらえようかと飛行機の中で思案していたのは確かだったから、嘘ではなかった。  もっともこれがおろし立ての新品だったとしても、自分が今の衝動を抑えられたかどうか、自信はないが。 「だから、心配しなくていい」  今度は優しく囁き、自分を見上げるその瞳をじっと見つめたまま、刺激を続ける。 「ん……あ……っ――。きづ…きさん」  自分を呼ぶその声はすでに拒否の声ではない。あっというまに視線を蕩かせ、可愛い声で啼き始めた恋人をできれば一度、このまま達かせてしまいたかったが、峻介ももう限界だった。  何しろ今、彼の目に映るすべてがあまりにも刺激的なのだ。……いや、そうさせたのは彼自身なのではあるが……。  しどけなく壁に身体を預けて喘ぐ恋人は、インディゴブルーの作業着の前をすっかりはだけて華奢な肩をのぞかせ、まくり上げられたタンクトップの下に、赤く濡れた両胸の尖りをあらわにしていた。  足元に崩れ落ちた七分はもはや用を成さず、きれいな筋肉質の両足が、快感に震えながらさらけ出されている。  無骨な鳶服を極限まで乱し、立ち上がった中心からなす術もなく蜜を零して愛撫に悶える漣の姿は、この世のものとは思えないほど色っぽくて……。  この同じ服を着て、危険な仕事を凛々しくこなす恋人の姿が不意に脳裏に浮かび、眩暈がした。もう、頭がおかしくなりそうだ。 「すまない、漣。少し……不安定だろうが……」  声にならない声で詫び、峻介はもどかしく自身の前を乱して、漣の片足に手をかけた。  足首に固定されたまま崩れ落ちていた七分が引っかかり、小さく声をあげて漣はバランスを崩す。その華奢な身体を慌ててもう一方の腕で支えながら、峻介は重い安全靴を投げ飛ばすように脱がせ、半ばむりやりその裾から下着ごと足を引き抜いた。  乱暴にしているという自覚はあるが、止まらない。その足を大きく持ち上げて壁に押し付け、もはや何を考える余裕もなく、一気に貫いてしまう。
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