第四章 「ふりむかないで」

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 今日は少し頭を使いすぎました。  このままほんの少しだけ、瞼を閉じてお休みしたいと思います。 ――つれづれの、歌草つづる、なぐさめの、心の褥に包む歳月――    (――おかあさん……)  ーー健勝?  暗闇から一筋の光が射す中、健勝が私を優しく呼んでいます。  健勝、私を許してくれるのですか? (――フミ……)   そして懐かしいあの深海のごとく深い声――。  ずっと、狂おしいほどに求めていたその声ーー。  ずっと、お待ちしておりました。  ああ、あなた――やっと、やっとお会いできましたね。
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