第1章

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 生徒たちが大騒ぎして右往左往、大部分が下の階に向かおうとして階段で詰まっていた。  それを教師たちが必死に収め宥めようようと、四苦八苦していた。  なかには地震か?  なにかが墜落したのか?  と予測している人間もいた。  とにもかくにも、阿鼻叫喚の地獄絵図といってよかった。 「…………」  そのなかに、必死に視線を彷徨わせる。  いない、いない、いない、いない――いないいないいないいないいない、約4分ほどかけて、だいたいの確証を得る。  確認して、下の階に向かう。  この混乱の中非常階段だけガラガラに空いているという事実に、集団心理の落とし穴を見た気がした。  二階、二年生の教室が集まっている階。  やはりここも大混乱だったが、今度はその中に飛び込んでいく。  そして知り合いを探した、うまいこと間隙を縫って。  とりあえず一通り学友の無事は確かめたが――ただ、ふたり。  もっとも大事な人間を見つけることは、叶わなかった。 「……くっそ」  一言だけ悪態をついて、一階の三年生の階の様子を確認してから、職員室なんかも横目で見て、そのまま昇降口に向かった。  なんとか大渋滞の中で隙を見つけて、人を押しのけ逆に押しだされるように前に出て、自分の靴を引っ掴んで、そして今度は逆に裏門に向かってそこから外に、出た。  ここまでは、予想通りだ。  言い聞かせるように、思った。
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