第1章

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 とにかく、焦らないようにと気をつけた。  焦ってうまくいくことは、古今東西見回してもひとつもなかったから。  街に、出た。  通りには、存外ひとの行き交いが多かった。  昼食時、昼休みという単語が頭をよぎる。  あまりの探索場所の多さと、そしてひとの多さに、一瞬眩暈を感じた。  間に合わない、という単語が頭をよぎる。  それを必死で、頭を振って掻き消した。  俺しかいないと、肝に銘じて。 「…………っ」  とにかく、駆け出した。  なんでもいいとさえ思っていた。  走りながら、それらしい影を探す。  見つかるわけないと頭の片隅では理解していた。  いっそ事件が起こってくれればいいとさえ思った。  人海戦術という単語が浮かび、それを掻き消した。  被害がどうしようもないところまで広がるぐらいだったら、ひとりふたりならいっそのことと。  未だ考えに甘えが混じっていることを悟った。  くそっ、と思った。 「ハァ、ハァ……くそっ!」  アスファルトの道路を、蹴っ飛ばした。  石粒ひとつ転がっていないことが、むしろ腹立たしく思えるくらいだった。  なんにもない。  手掛かりが、まったくない。  なんにもない。  どこをどう探せばいいのか、まったくわからない。  その上助けを求められる人物もいない。  おまけに時間も無い。
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