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とにかく、焦らないようにと気をつけた。
焦ってうまくいくことは、古今東西見回してもひとつもなかったから。
街に、出た。
通りには、存外ひとの行き交いが多かった。
昼食時、昼休みという単語が頭をよぎる。
あまりの探索場所の多さと、そしてひとの多さに、一瞬眩暈を感じた。
間に合わない、という単語が頭をよぎる。
それを必死で、頭を振って掻き消した。
俺しかいないと、肝に銘じて。
「…………っ」
とにかく、駆け出した。
なんでもいいとさえ思っていた。
走りながら、それらしい影を探す。
見つかるわけないと頭の片隅では理解していた。
いっそ事件が起こってくれればいいとさえ思った。
人海戦術という単語が浮かび、それを掻き消した。
被害がどうしようもないところまで広がるぐらいだったら、ひとりふたりならいっそのことと。
未だ考えに甘えが混じっていることを悟った。
くそっ、と思った。
「ハァ、ハァ……くそっ!」
アスファルトの道路を、蹴っ飛ばした。
石粒ひとつ転がっていないことが、むしろ腹立たしく思えるくらいだった。
なんにもない。
手掛かりが、まったくない。
なんにもない。
どこをどう探せばいいのか、まったくわからない。
その上助けを求められる人物もいない。
おまけに時間も無い。
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