夏休み(ファウスト)

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「嫌だわ、ファウスト兄様。兄様だって私にそっくりですのよ」 「そうか?」  そう言われてマジマジと見ると、確かに少しは似ているだろう。  長い黒髪は艶があり、瞳は黒曜石のように輝く。白い肌はファウストとは違い滑らかで、日に焼けてはいない。ほっそりとした肩は、ファウストの片腕で抱き込めるくらいに細い。 「さぁ、お話聞かせてくださいませ。ルカ兄様からいっぱい、お話聞いてますのよ」  にっこりと、そしてキラキラした乙女の顔をするアリアを見たファウストは、なんだか嫌な予感しかしなかった。  お茶の用意がされて、アリアと向かい合って座る。深い緑と白の室内で、アリアはご機嫌な様子で笑っている。 「随分楽しそうだな」 「それは、久しぶりにファウスト兄様が訪ねてきて下さったんだもの。前は確か…」 「去年の春過ぎだったか」 「あっ、そうそう! 寂しくて悲しいですわ。兄様は私の事など忘れてしまったのかと」 「そんな事はない!」  ただ、忙しくてなかなか足が伸びなかっただけで、可愛い妹を忘れるなんてことはない。慌てて否定すると、アリアはおかしそうに笑う。 「分かっていますわ。毎年のプレゼント、とても嬉しい。特に今年の誕生日プレゼントは、とても気に入っています」     
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