324人が本棚に入れています
本棚に追加
「嫌だわ、ファウスト兄様。兄様だって私にそっくりですのよ」
「そうか?」
そう言われてマジマジと見ると、確かに少しは似ているだろう。
長い黒髪は艶があり、瞳は黒曜石のように輝く。白い肌はファウストとは違い滑らかで、日に焼けてはいない。ほっそりとした肩は、ファウストの片腕で抱き込めるくらいに細い。
「さぁ、お話聞かせてくださいませ。ルカ兄様からいっぱい、お話聞いてますのよ」
にっこりと、そしてキラキラした乙女の顔をするアリアを見たファウストは、なんだか嫌な予感しかしなかった。
お茶の用意がされて、アリアと向かい合って座る。深い緑と白の室内で、アリアはご機嫌な様子で笑っている。
「随分楽しそうだな」
「それは、久しぶりにファウスト兄様が訪ねてきて下さったんだもの。前は確か…」
「去年の春過ぎだったか」
「あっ、そうそう! 寂しくて悲しいですわ。兄様は私の事など忘れてしまったのかと」
「そんな事はない!」
ただ、忙しくてなかなか足が伸びなかっただけで、可愛い妹を忘れるなんてことはない。慌てて否定すると、アリアはおかしそうに笑う。
「分かっていますわ。毎年のプレゼント、とても嬉しい。特に今年の誕生日プレゼントは、とても気に入っています」
最初のコメントを投稿しよう!