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「一人で全てをやろうとするんだ。他も巻き込めばいいのに、恐れてできない。自分の無謀さを無視して、仲間の痛みに泣きそうになる。いつも、自分の事は最後だ」
それが怖い。イーノックの時も、ルカの事件も。側にいるファウストは怖かった。知らぬ間に失うような気がして、不安になる。
でも少しだけ、彼も変わったように思う。少なくともドラクルの時には、一人で戦おうとはしなかった。無謀に突撃するのではなく、ファウストが来るまでの時間を稼ごうとしていた。そして素直に、ファウストに守られた。
少しは信じてもらえたのかもしれない。そんな事を期待した。
「素敵な人ですのね」
柔らかく笑うアリアを見て、ファウストは誇らしく頷く。困った部分もあるが、ランバートは自慢の隊員であり、仲間だ。これに変わりはない。
「とても大人ですのね。志も尊い」
「大人…ではないな」
「え?」
特に仕事を離れると大人ではなくなる。なんとも愛らしい一面が出てくる。
「案外子供っぽい。小さな事ではしゃいだり、楽しそうに笑う。ちょっとしたことで拗ねるし、悪戯っぽい顔もする。仕事を離れると、あいつは途端に子供になる。それを指摘するとまた、拗ねるが」
花見の時の楽しそうな笑みや、いつもよりも弾む足取りは愛らしいと思う。柔らかな笑み、嬉しそうな顔、拗ねたような顔。どれも親しい者に向ける顔だ。
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