夏休み(ファウスト)

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 けれど僅かに寂しそうにもする。それはほんの一瞬、ふとした時に見せる顔。寂しそうだったり、悲しそうだったり。それを見ると、苦しくなる。 「…他人の温かさに、慣れていないんだろうな」 「え?」 「楽しそうな時にも、ふと寂しそうにする。温かな場所にいる時にも。差し伸べる手を、取れない。全てを自分でやってきた奴が、向けられる好意に戸惑っている。自分は無条件に手を差し伸べるのに、それが自分に向けられる事は考えていなくて、手を伸ばして取ろうとはしない。不器用な奴だ」  困ったように笑うその影で、受け取る好意に恥ずかしそうに赤くなる。本当に、少しだけ。  でも、いいと思う。前なら断ってしまっただろう。照れながらも受け取るようになったのだから、馴染めるようになったのだろう。 「兄様…」 「ん?」  ふと見ると、アリアは顔を赤くしている。熱が出たのかと慌てて額に触れたが、そうではない。なんだか、とても恥ずかしそうだ。 「どうした?」 「いいえ。兄様の惚気を聞く日がくるなんて思わなくて」 「惚気?」 「兄様、本当にその方の事がお好きなのですね」  照れながらも笑顔で言ったアリアを、ファウストは何度も瞬きしながら見た。そして、自分が言った事を思いだして耳が熱くなった。     
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