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ランバートという人物を教えるとなると、こうなった。でも…惚気になるんじゃないのか? しかも単純に「かっこいい」とか「可愛い」とかじゃなくて、もっと…誤魔化しのきかない…。
「あの、兄様! 私は嬉しいですよ! 兄様にも大切にしたい方が出来たのは分かりましたし、とても素敵な方なのは伝わりました。兄様はその方をとても大切に慈しむのが良いと思います!」
「アリア、それは…」
「あの、結婚式の前にはちゃんと顔を合わせたいので、お連れ下さい」
「どこまで話が飛んだんだ!」
結婚式どころか、恋人にすらならないんだ。
そう、恋人ですらない…。
「兄様?」
不意に、胸にある痛みに気づかされる。それは時々、感じていた痛み。自分の狭量ゆえだ。
仲間が出来る事を喜び、見守っていたはずなのに、ふと寂しさを感じる。そんな時に、胸が痛む。
そして頑なに思う。触れてはいけない。できるだけ距離を保てと。側に置けない。
行動を制限するような事を言いたくない。のびのびと羽根を伸ばそうという青年の枷になりたくない。
不意に、アリアが心配そうな顔で覗き込んでくる。手が、頬に触れた。
「兄様、苦しそうだわ」
「苦しいわけじゃ…」
「兄様は、幸せにならなければダメよ。母様だって、きっと願っています。兄様の幸せを、願っています」
「アリア…」
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