ファウストの父

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ファウストの父

 忙しい祭りも、八月の頭を過ぎれば落ち着いてくる。次の大祭を前に、夏休みを取る隊員も多い。ファウストも久しぶりに妹に会いに行くと言って出て行った。  ランバートは今月街警。今回は東砦詰めだが、仕事が終わるとジンの所やルカの所に顔をだし、何でもない時間を楽しむのが日課になっている。 「兄さん、アリアの所に行ってるんだ」  ファウストが休みを取った事を教えると、ルカは嬉しそうな顔で笑う。そばではレオが夕飯後の片付け中だ。 「久しぶりだって言ってたけれど」 「そうだと思うよ。兄さんが顔を見せに行ったのって、確か去年の四月かな」 「そんなに? 兄妹仲が悪い訳じゃないだろ?」  ルカともすっかり打ち解けて話せるようになった。そのせいで、少し荒さもでてきている。それでもまったく気にする様子はなく、ルカは頷いた。 「とても仲がいいよ。っていうか、兄さんが僕たちに構いたがるし、過保護だし」 「それは分かるな」 「でしょ!」 「でも、それならもっと顔を見せてもいいのに。そんな何日も休まなくても行ける距離だろ?」  場所を聞くと、馬で一日。四日も休みを取れば十分なのに。     
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